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“暗黙のルール”を破り続けた安倍政権。「歴史が判断する」の真意<ダースレイダー>

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 東京大学中退という異色な経歴を持ちながら、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(43)この連載では現代日本で起きている政治や社会の問題に斬り込む。

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 2012年12月に発足した第二次安倍政権が、歴代最長となる7年8か月で幕を閉じることになった。森友学園や加計学園の問題、公文書改ざんなどさまざまなスキャンダルを起こしながらも維持された、この安倍政権とは何だったのか? 前編に引き続き、ダースレイダーが振り返る。

官邸の資料は辞任時に廃棄された

 歴代の日本の首相すべてが抱えている問題として、辞任したときにそれまで首相官邸に集まっていたさまざまな資料を保全するルールがなく、首相の判断で廃棄できます。これは福田康夫元首相、鳩山由紀夫元首相らが実際にインタビューで答えているのですが、官邸を去る日に鳩山さんは、シュレッダーで自分の持つ資料を全部処分したと。福田さんはそうした事態に「行政のトップの記録は残して当然だ」と考えを改め、公文書管理の強化に取り組んでいます。

 安倍さんが何かの決定を下すときに何を判断材料にしたのか官僚が説明したものを「レク資料」と言うのですが、これがしっかり残されていれば、安倍さんが言うように歴史が判断することが容易になると思います。

 さて、安倍さん自身は官邸にある資料をどうするのか。もし、残すという判断をした場合は記者の「レガシーは?」という質問に対して「歴史が判断する」と回答し、それに対して判断材料を提供した首相として、僕はそれこそがレガシーになると思っています。もし、そういったことをするのであれば本当に立派だと思います。

過去に資料から“重大な嘘”の発覚も

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鳩山由紀夫元首相 ©️Jens Tobiska

 ちなみに鳩山さんはレク資料を廃棄したと言っていたのですが、外務省のレク資料が処分されずに残っていて、実はそこに嘘が書かれていたんです。

 鳩山さんは「最低でも県外」と言って辺野古基地の県外移設を訴えたんですけど、レク資料には「米軍のマニュアルに明記された基準により、鹿児島には距離が遠いため移せない」といった内容の記載がありました。ところが米軍にはそのような規定が存在せず、何なら当時のオバマ大統領はグアムなどに米軍の中心を移すというアイデアを表明していた。つまり外務省は日本の首相に嘘のレクをして、それによって辺野古建設を進めようとした。

 レク資料が残っていたために、官僚が行政に背き、国会議員に嘘のレクをすることがあると知ることができた。それによって、僕らは「ちゃんと全部見せろ」と思うようになるわけです。しかし残念ながらその声は高くなっていません。今回、せっかく安倍さんが「歴史が証明する」と言ってくれたので、このタイミングで日本政府、官僚はどう仕事をしてきたのか確認する必要があります。

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