上野動物園のモノレールが休止に。“90秒のミニトリップ”よ永遠に
廃止の構想が持ち上がる
車両は1編成のみ、全線単線で車両基地もないという環境のなか、車両をM形に更新するため、1966年12月に全面運休。1967年元日から営業運転を再開した。
乗客は1日平均3700人、子供たちの人気者として順風満帆に思えたが、1980年、交通事業再生再建計画により廃止が持ち上がった。すでに実験線の役目を終えたほか、駅舎や車両の老朽化により更新が迫られていたのだ。
それを聞いた鈴木俊一東京都知事は、上野懸垂線の廃止に待ったをかけた。1982年に恩賜上野動物園が開園100周年を迎えることから、「記念事業の一環として、子供たちのためにも存続を検討すべきではないか」と。その後、日本宝くじ協会の全面的な助成により、駅舎の改築や車両更新など、改修計画がまとまった。
1984年9月から7か月にわたる改修工事を経て、1985年4月2日に営業運転を再開し、UFOのイメージを思わせる形状の30形がデビューする。冷房装置の搭載、車椅子スペースの設置など、快適性が大幅に向上した。
しかし、大規模な改修工事が決まり、1999年12月19日から1年5か月にわたり長期運休。時代は20世紀から21世紀に変わり、2001年5月31日に営業運転を再開した。このとき40形がデビューし、歴代の上野懸垂線車両では最長のキャリアを誇る。
2019年1月23日、東京都建設局と東京都交通局は上野懸垂線の休止を発表した。40形の老朽化により、新型車両を投入したくても製造期間に3年程度を要するほか、費用も18億円にのぼる。1両造るだけでも新幹線より高いのだ。
モノレールでは珍しいパンタグラフ
実際に40形をチェックすると、車両を「ハンガー」と呼ばれる懸架装置を軌道桁に載せて支えているほか、その上に台車があり、大小のタイヤで動かす。
さらに軌道桁の下には、直流600ボルトの剛体架線が2本あり、パンタグラフで集電する。サフェージュ式懸垂式モノレールの湘南モノレール、千葉モノレールに比べ、複雑な印象を持つ。
加えて、建設から60年以上たち、さらに大規模な改修工事が必要になることから、運行を休止し、都民などの意見をうかがってから存続、廃止のいずれかを検討するという。
一度廃止の危機に直面したときは、鈴木知事の“子供に対する思いやり”により、存続が決まった。現在の小池百合子知事は、どうお考えなのだろうか。
私論を述べると、上野懸垂線を存続させるのなら、費用18億円超の可能性を承知のうえで、全面的な建て替えを提案したい。サフェージュ式懸垂式モノレールに作り直すことも一考であろう。