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YouTubeに出現した「ていねいな暮らし」の居心地の悪さ

コラム

YouTubeに突如現れた「ていねいな暮らし」

もて:ネット配信といえば、最近「inliving」というYouTubeチャンネルがTwitter上ですごく話題になっているのを見かけました。いわゆる「ていねいな暮らし」的なものとYouTuber的なフォーマットを組み合わせたことが注目された理由なのかなと。白武さんは見られました?

白武:見ましたよ。よかったです。ぼくはどっぷり「ていねいな暮らし」松浦弥太郎派閥ですから(笑)。「inliving」さんの動画は面白いですよ。T-falのケトルのお湯が湧くのを290秒映し続けたり、誰が見てもソフトクリームなのに「ソフトクリーム」と丁寧にテロップを入れたり。

 イケアに行った回は神回でした。イケアのホットドッグにケチャップとマスタードとトッピングをかけるシーンを30秒使って描いたにも関わらず、次のシーンではソフトクリームを食べている。それ以降ホットドッグは出てこない。食べたのかもわからない。その後、買ったものを紹介すると言って、小さめのイケアのバッグの中からさらに小さいイケアのバッグとフライドオニオンを取り出して終わり。

「それだけ?」と視聴者は心の中でつっこみを入れる。普通こうなるだろうということが欠落していたり、過剰になっていたり。笑いの基本「裏切り」が連続して起こるので、飽きずに見ることができますね。

もて:ちゃんと見てますね(笑)。

白武:「ていねいな暮らし」のテイストとYouTuberって相性よくないと思うんですが、それを両立させているのは新しいなと。従来のYouTuberみたいに派手じゃなくてもいいんだなって。菊池亜希子さんの『マッシュ』に憧れる人が多いように、そういうポジションになっていくと面白いですね。

もて:これまでもInstagramとかでは同じような形で日用品だったり、日々の暮らしについて投稿する人は多かったと思うんですけど、それがYouTubeフォーマットに載るのは新鮮な感じがしましたね。ただ、一方でぼくは結構「しんどいな」と思ってしまっていて……。

白武:「しんどい」? なんでですか?

資本主義世界としてのYouTube

もてスリム

対談は2月に収録

もて:身もフタもないなって思っちゃったんですよね。「ていねいな暮らし」的なものって、この10年ですごく影響力をもつ考え方になっていますよね。2011年にアメリカで創刊したライフスタイルマガジン『KINFOLK』がすごく話題になって日本でもああいった世界観が受け入れられるようになって、SNSに投稿されるビジュアルの空気感もかなり変わってきたと思うんです。

白武:シンプルな暮らしとか、ミニマリストブームみたいなものも並行して起きていた印象があります。あと、「オーガニック」もかなりメジャーな価値観になってますね。

もて:そうそう。そういう考え方って、これまでの大量生産・大量消費の生活様式に対するカウンターみたいなものだったと思うんです。安かろう悪かろうじゃなくて質のいいものを買って長く使おうとか、環境に優しい製品を使うのがいいんだ、というか。でも、YouTuberってそういう文化とは少し違うというか、もっと明け透けに資本主義っぽい世界観じゃないですか。

白武:たくさんお金を稼いでたくさん商品を買って動画で公開するみたいな。これまでは「ていねいな暮らし」の人たちがYouTuberをやるって発想はなかったわけですからね。そこがひとつの新しさなんだろうなと思っていました。需要もありそうですし。

もて:そうなんですよ。もちろんその新しさが評価されていることはわかるんですが、ぼくはどうしても居心地が悪い感じがしてしまうんです。

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