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「ノー残業デー」に残業して負傷した…これって労災おりる?

学び

ノー残業デーに、こっそり残業してケガ

【1】全社員定時退社を義務付けられたノー残業デーにこっそり残業し、ケガをした

残業

 それでは次の場合は労災として認められるのでしょうか? ノー残業デーといえども、残業を行う合理性があり、業務を遂行していたのであれば、事業主の管理下にあったと言えますので、業務災害として取り扱うことになるでしょう。

 別の問題として、会社によっては就業規則で残業は上司の命令によること、残業が必要だと判断した場合は、上司の許可を得ることなどと定めていることが多くあります。

 許可なく残業を行うことを禁じられている場合は、注意や指導の対象となったり、ノー残業デーの徹底を指示されるかもしれません。

 一方で、ノー残業デーにもかかわらず仕事が回らないほど負担が大きいのであれば、会社としては仕事の配分や手順を見直すことも考えるべきでしょう。

隠れて自転車通勤していて事故に遭ったら?

【2】会社に無許可で自転車通勤をしているときに転んでケガをした

 会社には電車で通勤すると申請していながら、隠れて自転車通勤をしてケガをしても、通勤災害と認められるのでしょうか?

 結論から言えば、自転車を使用していたことのみをもって通勤災害と認められない、ということはありません。「合理的な経路」はひとつではありませんので、自転車での経路に合理性があれば通勤災害として認められる可能性もあるでしょう。

 ただし、国による審査の過程で、自転車を使っていた理由を確認されたり、自転車を利用することによってあまりにも通勤に時間がかかるような場合には、難しい場合があるでしょう。

 ここでも大きな別の問題があります。本当は自転車で通勤しているのに、会社に通勤費として定期代を不正に申請することは、懲戒処分の対象となり得ます。

 就業規則のなかで、通勤費の不正な請求を禁止し、発覚した場合は返還を定め、懲戒の対象としているケースは多く見受けられます。悪質な場合は詐欺、横領とみなされる可能性もあります。

 労災の制度は、労働者の安全と生活を守ってくれる制度です。安全に健康に働くことができれば一番ですが、その概要については日頃から知っておいて損はありません。そして会社の規定を守ることもどうかお忘れなくお願いします。

<TEXT/澤上貴子>

さわかみ社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士/健康経営エキスパートアドバイザー。会社の発展を支え、従業員のモチベーションを育む労務コンサルティングを目指す。20年以上の豊富な実務経験にもとづく、的確で時には攻めの姿勢のアドバイスと、きめ細やかな対応が評価を得ている。労働諸法令に関する指導・相談・手続・講師業、その他多岐に亘る分野において、良心と強い責任感をもって展開している

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