増税、二番煎じ…岸田首相が唱える「異次元の少子化対策」は不安だらけ
地方自治体の活性化につながるか
公立化された大学は全国にたくさんあります。2016年には京都府福知山市の成美大が福知山公立大学に改称する形で公立化し、2017年には長野大学が同じ大学名のまま公立化、2022年にも徳山大学が周南公立大学に改称して公立化しています。
私立大学の公立化は、先述したように地元に残ってもらうという過疎化対策から始まりました。また、経営危機に直面した大学を救済するという目的もありました。私立大学の公立化は、そうした思惑とは別に副次的な効果をもたらしていきます。
東京・名古屋・大阪に進学すれば、通常は地元を離れて1人暮らしをすることになります。1人暮らしをするには、大学の授業料のほかにアパート代・食費・光熱費など年間100万円前後の費用が余分に発生します。その費用を捻出できないために進学を諦めていた若者も存在するでしょう。
地元に、しかも授業料が比較的に安価な公立大学があるなら、その大学へ進学するという選択が生まれたのです。進学にかかる経済的な費用を軽減することは、間接的に少子化対策にもつながります。子育て支援のためにお金を配ることを否定するわけではありませんが、こうした経済的負担を軽減する取り組みによって少子化を解消することもできます。
消費税増税に疑問符が
少子化対策は、政府よりも地方自治体の方が先行しています。岸田首相が「異次元の少子化対策」を宣言するなら、まずは先を行っている地方自治体の少子化対策を模倣することから始めることが理想です。良い政策は、国の施策であっても地方自治体の施策であっても関係ありません。最終的に国全体が富めばいいのです。
ところが前幹事長の甘利明衆議院議員が「異次元の少子化対策」の財源捻出のために消費税を増税する考えがあることをBS番組で言及しました。消費税は、その名の通り消費にかかる税金です。一般的に、高齢者層よりも若年層のほうが飲食や買い物など消費を伴う行動が多い傾向にあります。
つまり、消費税の増税により、ますます若者は可処分所得が減り、それが結婚や出産を控える傾向を強くし、出生率を下げるには十分の効果を発揮することは間違いありません。これでは何のための少子化対策なのか疑問です。本末転倒でしかありません。
岸田首相が宣言した「異次元の少子化対策」は、いかなるものになるのか? 2023年は、それを見極める1年になるかもしれません。
<取材・文・撮影/フリーランスカメラマン 小川裕夫>