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“ジェネリック医薬品大手”が債務超過356億円で「上場廃止」に。崩壊の背景にあったもの

ビジネス

規模を拡大してコストを下げるという悪夢

日医工

※決算説明資料より

 日医工は2019年に「エルメッドエーザイ」を買収しました。これによって日医工のシェアは業界トップとなります。買収の狙いは規模の拡大によって生産効率を高めることにあります。エルメッドの重複品目の製造所や原薬を統一することで生産効率を上げ、粗利率を高めて薬価切り下げの影響を和らげようとしました。日医工は買収によって今後3年間で25億円のコストシナジーが生まれるとしていました。

 製造体制や品質管理が崩壊していたにも関わらず、規模を拡大して生産効率を高めるという無謀な取り組みを行っていたのです。加えて2019年3月にアメリカのノースカロライナ州にある工場を取得。アメリカの供給体制を整えようとしていました。ジリ貧の日本市場を抜け、海外展開を本格化していたのです

 日医工の経営陣が生産体制の増強や品質管理の徹底を怠ったのは事実。それを改善しようとしなかったのは、怠慢というほかありません。しかし、その背景には後発医薬品の普及や薬価の切り下げが要因としてありました。政府の意向に沿ってビジネスを展開することの難しさを物語っています。

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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