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赤字続きの「老舗文房具メーカー」の行く末。買収され、視線は海外に

ビジネス

1950年代から構築した海外ネットワーク

ぺんてる

画像はイメージです(以下同じ)

 リモートワークから出社へと切り替わる動きもあり、インバウンド需要にも期待できることから、今後需要が上向く可能性はあります。しかし、2019年度の水準まで戻り切ることはないでしょう。国内の文房具需要はジリ貧。多くのメーカーは海外へ軸足を移したいと考えており、プラス、コクヨがぺんてるを傘下に収めたいと強く望んでいた理由です

 ぺんてるの海外進出は早く、1950年代には生産拠点を築いていました。コロナ前には海外に21か所の販売拠点を持ち、120か国にネットワークを築いていました。品質管理を徹底し、世界中で愛されるブランドに成長しています。

 文房具は国によってデザインや機能に求められるものが違います。長年海外に拠点を構えて製品開発に邁進していたぺんてるは、ヨーロッパやアメリカ、アジアなど各地域のニーズを正確に捉えていると言われています。製造拠点、販売網、売れる商品のノウハウやデータ、各エリアに精通した駐在員……これらを一朝一夕で築き上げることはできません

 M&Aは「時間を買う」と言われますが、ぺんてるの買収も正にそのもの。海外ネットワークを手にしたプラスは、独自に開発した文房具ブランドを海外で広く販売する足掛かりができました。

資本関係のない業務提携に?

 実はコクヨは、海外事業で提携し、今後も共に拡大を目指すとしています。資本関係のない業務提携をするというのです。おそらく、コクヨが保有株を手放す際に海外事業で提携することを、契約に盛り込んだものと考えられます。気になるのはぺんてるがどれだけ本腰を入れるか。

 ぺんてるはコクヨとの業務提携の概要、プラスとの業務提携の内容をそれぞれ公表しています。コクヨとの提携に関しては、付加価値の高い日本の文具を広めることで海外文具市場における両社の事業拡大が目的としています。

 プラスとの提携については、出資関係に基づく広範な業務提携を行い、相互の人材交流、付加価値の高い製品開発・製造・販売における協力関係を構築するとしています。両社への熱の入れ方が全く異なります。この発表を見ると、コクヨとの業務提携が名ばかりのものであることは明らかです。両社の禍根が残っているとも言えるでしょう。

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