<漫画>平凡な女子高生が転落していく惨劇…。“裏社会”に精通する原作者を直撃
「無茶を言う」のはリアリティを求めて
――ゴンザレスさん側からも単行本のあとがきで船木先生に毎度無茶な注文をつけていると語っていましたが、絵的にはどのような点にこだわっていますか?
丸山:僕なりにリアリティのある絵を求めて無茶を言ってしまいます。例えば、男の人が殴られてるとしたらストレートに「痛い!」というよりは、不快な感覚から逃れるために卑屈な顔にしてほしいとか。前に別の漫画家さんに言われたんですけど「原作者は一言で書くけど、漫画家は一面を全部絵で埋めなきゃいけないんだから、そんな簡単に書かないでくれ」と。
船木さんにとって、それは簡単なことかもしれないし、難しいことかもしれない。それは文章に修正を入れる時と違ってわからないので緊張します。だから、注文をつけるたびに無茶なこと言ってるなと思うようにはしてますね。
――お仕事をしていく上で密にコミュニケーションを取られているのですね。
丸山:むしろ逆だと思います。今、船木さんとは直接会えてないので、濃いコミュニケーションは取っていないんですよ。だからこそ関わってる一人ひとりの、プロフェッショナルとしての発言の重みを大事にしています。
寝取られ性癖を掘り下げて取材したら…
――リアリティのある後味悪さが癖になる本作ですが、今までジャーナリストとして見聞きしてきた現実も反映されているのでしょうか?
丸山:基本的には全部実話です。ほとんど現実で起きてることを僕がコラージュして再編集してストーリーにしています。実際に周りで起きてる話と資料を融合させていくっていうのが、面白いなと思いますね。
――逆に作品作りのために追加取材をしたことはありますか?
丸山:寝取られ性癖についてですね。
――「寝取られ」ですか!?
丸山:僕は日本での生活に関しては平穏無事が1番だと思っているので、「寝取られ」の心理が全くわからないんですよ。ずいぶん関連の小説や漫画を読みましたね。毎月税理士さんにExcelで資料本の経費をまとめて提出してるんですけど、打ち合わせのときにちょっと笑われたのがすげえショックでした(笑)。横に「漫画原作用資料」としっかり書いて送ったんですけど。ちなみに、Amazonのおすすめもめちゃめちゃになりました。この取材がどこに使われたかは本編を読んでみてください。
――丸山さんはノンフィクションを主戦場とされていますが、それでもフィクションにしか描けない領域があるのでしょうか?
丸山:普段のノンフィクションの世界で、しかもリアリティを徹底的に追求していくんだっていう部分での仕事が、僕の1個の柱です。でもその世界だけにいるとやっぱりそうじゃない物語の世界にも入りたいんですよね。
リアリティを追求していくと、当事者や、あまりにも本当のことに当たってしまって、それ以上、何も言えなくなったり、書けなくなったりする領域があるんです。だからノンフィクションでは出せないものをこうやって、うまく混ぜ込んでフィクションとして出せるっていうのは、今まで取材した自分に対してのご褒美だと思っています。
<取材・文/日比生梨香子 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>