“釣りブーム”に湧く釣具業界。好調「シマノ」に続く競合2社で分かれた明暗
グローブライド:不調からの増収増益
グローブライドという社名からはピンと来ないかも知れませんが、「ダイワ」と聞けば釣り好きな方はなら反応するはず。ダイワブランドで知られる釣具の他、「ONOFF」ブランドのゴルフ用品の製造販売を行っており、米・テニスラケットブランド「Prince」の国内販売事業も展開しています。同社もシマノ同様、釣り人気によって業績を拡大しました。2019/3期から2022/3期までの業績は以下の通りです。
【グローブライド(2019/3~2022/3)】
売上高:878億円→883億円→1003億円→1207億円
営業利益:38.2億円→36.1億円→74.1億円→123.5億円
最終利益:29.6億円→11.2億円→48.0億円→95.7億円
2020/3期は悪天候の影響で国内の釣具販売が芳しくなく、この点はシマノと同じといえます。海外向けに関してはEU離脱問題でイギリス向けが不調となったほか、アジア向けも不調となり、売上高は思うように伸びませんでした。利益面では物流費やシステム関連費が増えて営業利益が減少し、のれん償却も重なって最終利益は大きく減少しています。
しかし、コロナ禍に入ってからはシマノ同様に業績を拡大しました。2021/3期は釣り人気にあやかっただけでなく、「ダイワ・テクノロジー」を搭載した新製品が好調となり業績が拡大しました。そして2022/2期は世界中で釣り人気がさらに加速したこともあって、増収増益となっています。
依然として物流費の上昇は続いていますが、増収分がこれを相殺できているようです。そもそも同社は以前から新製品開発・マーケティング施策に力を入れ、世界中で売上を伸ばしていました。コロナによって発生した釣り人気でさらに事業を拡大した形です。
ティムコ:市場拡大に乗れなかった
シマノやグローブライドと同じく釣具を扱う「ティムコ」の2021/11期の主事業は(1)フィッシング事業:10.7億円、(2)アウトドア事業:18.6億円です。
(1)ではシマノ、グローブライドと同じく釣具を扱っていますが、前者2社が製造・販売を手がけるのに対し、ティムコは各メーカーの釣具を店舗に供給する卸事業を展開しています。(2)はアウトドア用の衣類を主製品とし、卸事業のほかに自社ブランド「Foxfire」の製造および店舗での小売事業も行っています。同社はアウトドア用品・釣具を扱っていながらコロナ禍でのブームに上手く乗れなかったようです。2018/11から2021/11までの業績は以下の通りです。
【ティムコ(2018/11~2021/11)】
売上高:30.0億円→29.2億円→26.7億円→29.5億円
営業利益:4300万円→▲400万円→▲1.3億円→▲2600万円
最終利益:3100万円→▲1300万円→▲2.2億円→▲900万円
売上高(フィッシング事業):9.0億円→8.2億円→8.9億円→10.7億円
2019/11期はシマノ、グローブライド同様、台風などの悪天候が続いたことで釣具の売上が減少し減益となりました。アウトドア事業も暖冬の影響で防寒具が売れず、伸び悩んだようです。翌2020/11期はコロナ禍での釣り人気によってフィッシング事業の売上高が回復した一方、アウトドア事業では百貨店やショッピングモールの休業が相次いだことで売上高が大きく減少し、全体では減収減益になってしまいました。
そして、釣り人気が加速した2021/11期はセグメント売上高が20%も増えるなどフィッシング事業は躍進しましたが、前年同様アウトドア事業の不調が続き、黒字化は実現しませんでした。卸という事業の性質上、客足が遠のいた小売業界に影響されるアウトドア事業の不調が続き、全社では業績が悪化した形です。「Foxfire」のブランド力・知名度がより高ければ違う結果になっていたかもしれません。