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所持金2円の男性に役所はカップラーメン1個だけ渡した…20代起業家が見た「仕事探し」の現実

ビジネス

市川さんの心に残っている出来事

いえとしごと

面談で履歴書の書き方をサポートする市川氏(中央)

――心に残っている出来事も教えてください。

市川:さっきの電気工事士の方ですね。就職してからも定期的に連絡をくれて、少しずつ生活を立て直せている様子を知れて嬉しかったです。

 本当にすごくしっかりされている方なので、どんな方でも家や仕事を失うこともあるんだなということを実感しました。働く意欲はあるのに、状況的に仕事を自力で探せない。働きたくても条件的に働けない方のサポートをしたいと思ったきっかけですね。

 相談に来られる方のなかには、「身分証がない」「住民票の取得ができない」という状況に身動きが取れなくなっているケースも少なくありません。仕事も家もない方には寮付きの仕事を紹介できるのですが、「仕事はしているけれど家がない」といった方には仕事を紹介することができないため、家だけを貸すという別事業もやっています。

 身分証を1回なくしてしまうと、詰んでしまうんです。住民票の取得には、身分証明書が必要。年金手帳だけだと足りず、顔写真付きのマイナンバーカードなどが必要になります。身分証や携帯電話がないと審査が通らず、自分で家を借りられない。家を探すにも住民票を出してくれと言われるし、住民票を置くために家を借りたいんだけど……と、どうしようもなくなってしまいます。

つまずくと生活を立て直しづらい社会

いえとしごと

Relight株式会社のもうひとつの事業「コシツ」

――恐ろしい悪循環ですね。でも、住民票が取得できない状況って、どんな感じですか?

市川:引っ越しで転出して、転入し忘れたままになってしまい、そのままどこにも住民票を置いていない状態になってしまった。あるいは、住んでいない家に住民票を置いたままにしていると、職権削除などで住民票を消されてしまうこともあります。

 住民票が除票になると、運転免許証など顔写真付きの身分証明書があっても住民票を取ることができなくなってしまうんです。そういう場合は、いったんどこかに住所を移すという作業が必要になります。

 また、いまの日本は信用情報がベースです。そのため、家賃の場合は保証会社利用しで滞納してブラックになってしまうと、家が借りづらくなります。携帯電話の滞納も同じで、レンタル携帯やプリペイドでしか生きていけない。クレジットカードも同じ。一度つまずくと生活を立て直しづらいんです。こういった社会の仕組みもどうにかしたいですね。

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 市川氏の言うように、一度つまずくと軌道修正が難しい社会のなかで、身動きが取れずに困っている人はたくさんいるはずです。見えにくいホームレス問題とともに、日本が直面している大きな課題のひとつと言えるでしょう。

<取材・文/山内良子>

フリーライター。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意です

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