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『情熱大陸』で話題に!“好きなこと”を仕事にした生物ライターのリアルな生き方

暮らし

 この夏、平坂さんは、最大約3メートルまで育つという北米最大の淡水魚「アリゲーターガー」の記事執筆のため、アメリカテキサスへ向かいました。

 アリゲーターガーは、捨てられた飼育個体が日本各地で目撃される事件から認知されるようになり、また在来種を食べるなど生態系に影響を及ぼす危険性から「特定外来生物」に指定されました。

 平坂さんは、そんなアリゲーターガーへの世間の誤解を解きたいという思いから、今回の取材へ向かいました。捕獲されたアリゲーターガーは平坂さんの腕におとなしく抱きかかえられ、平坂さんは「So cute」と感無量の様子でした。

“専門性活かせる職場”は今後の課題?

 平坂さんは、前述のとおり筑波大学大学院で生命環境科学研究科を学んでいます。平坂さんのようにフリーランスで活躍できればよいですが、そうでなく就職して専門知識を生かす道はどのぐらいあるのでしょうか?

平成29年版 労働経済の分析」(厚生労働省)によると、企業における大学院博士卒の割合は、アメリカの13%に比べて、日本は5%しかありません。

 原因のひとつには、日本企業の採用において、熱意やコミュニケーション能力など、専門性によらない部分が重視されていることが指摘され、博士課程で得た専門性の活かせる職場環境が整っていないことが課題となっています。

 そんななか、2015年より、総合商社の三井物産による博士課程に限定した新卒採用活動が始まりました。研究内容だけでなく、研究の中で培われた情熱や粘り強さに期待したもので、就職先が限られがちである博士課程の学生の立場を考慮した試みとして話題となりました。

平坂さんの姿勢に賞賛の声

 SNSでは、平坂さんの生き物愛や、仕事にかける情熱に対して、賞賛の声が多く寄せられています。

「生物ライターというより、アクティブな研究者だ!」

「“好きなこと”を仕事として貫き通していくのは大変なこと」

「平坂さんのもっと生き物のことを知りたい、広めたい、という情熱の強さに感動した」

 生物ライターとしての平坂さんの生活は、決して楽なものではありません。同番組でも「記事は月に5~6本は書かないと、いろいろな意味で成り立たない」と平坂さんは言います。しかし、平坂さんはそういった苦労にも関わらず、仕事で得られる達成感や、使命感のためにライター業を続けています。

「好き」を仕事にしている人間の持つ“想いの強さ”。子供の頃は誰もが持っていたはずの「好き」の気持ちを持つ大切さを、平坂さんは私たちに教えてくれます。

 教育機関での研究や専門性が見直されつつある現代で、より多くの人が、自分の「好き」に素直に仕事や進学に打ち込めるようになると良いですね。

<TEXT/上山ヨーコ>

中高を一貫の女子校で過ごし大学で美術を学ぶ。公立美術館で2年半の勤務を経て、現在は時事やビジネス情報を中心に執筆をする。旅行と音楽と犬が好き

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