むかつく同僚が急激に業績を伸ばして天狗に。実はヤバい営業をしていて…
「東京にある支社が吹き飛ぶかもしれない」
「もういいかげん限界でした。それまでは、一定の成果が出せないまま辞めるのは悔しいと思っていたんですが、体調もおかしくなっていたので。そんなときに同期から驚くべき噂を聞いたんです。東京にある支社のひとつが吹き飛ぶかもしれないという話で……」
いったい何があったのでしょうか。
「そこは桑野がかつて在籍していた支社でした。主な顧客は中小企業企業の社長や、重役あたりなんです。クロージングのツールとして、大口の取引が制約した場合、家電などをサービスとして提供する制度がありました。彼はこの制度をうまく活用することで成果が出るようになったと言っていたんですが、完全にアウトな手法でした。
具体的には、サービス品の話は一切せずに契約してもらったのにもかかわらず、会社にはサービス品をつけることになった報告していたようでした。そして、『自分で先方に届ける』と報告し、自宅まで商品を届けさせていました。で、その商品をネットで売り払って、自分の懐に入れていたんです」
クロージングツールの悪用がバレた
「つまりは横領していたというわけです。どうやらその支社の一部の社員の中では常態化していたらしく、ほかにも5名ほどの社員が行っていたようでした。金に汚い桑野は“換金ボーナス”をモチベーションにすることで、成績を上げていたようなんです」
無論、会社が黙っているわけがありません。
「横領事件として告訴するか、金を返すまで働き続けるか二者択一を迫ったようです。告訴されれば経歴に傷がつくため、桑野をはじめ横領に関わっていた社員はみな残る道を選んだようです。自分が会社を辞める直前に見た桑野は、死んだ目で仕事していましたね。もう辞めてから4年ぐらい経ちますが、風のうわさで桑野はいまだに在籍していると聞きました。まだ横領した金を返し終えていないのか、それとも脅されて辞められない状況にあるのか知りませんが……」
営業マンなら誰しも数字を追い求めるもの。とはいえ、いくら数字を伸ばしたといっても、ルールの外であるならば話は別。内に野望を秘めているのであれば、正攻法で努力するべきだったのかもしれません。
<TEXT/和泉太郎 イラスト/野田せいぞ>
特集[令和のスカッとした話]