アイリスオーヤマ、家電が10年で12倍成長。「会議の秘密」を執行役員が語る
役員の前でプレゼンする「新商品開発会議」
また、アイリスオーヤマの家電開発に欠かせないのが毎週月曜開催の「新商品開発会議(プレゼン会議)」だ。毎回どのくらい企画を持っていくなどのノルマはないというが、「経営幹部にアイデアを見せる以上、プレッシャーは感じていると思います(笑)」と原氏は語る。
「ただ、そこは開発者としてのメンツというか、ものづくりにかける意地や想いがあるからこそ、モチベーションにも繋がっています。また、毎週どんなアイデアをプレゼンするかは開発者の裁量に任せている。『思いつきのもの』もあれば、しっかりと煮詰めて『プロトタイプを作って見せたほうが伝わるもの』もある。画期的なアイデアや便利な機能も重要ですが、最終的にはお客様視点でジャッジしています」
本当に値ごろ感ある商品価値があるかどうかを判断し、改善が必要な場合はフィードバックする。その結果が、高すぎず、安すぎないちょうどいい“値ごろ感”を生み出しているのだ。
「他社メーカーは、お客様の予算やニーズに合わせて、松・竹・梅とラインナップを展開するのが一般的だと思いますが、当社の場合は開発者自らが納得できる値段をあらかじめ決めて、会議に持っていく。そこからプレゼンを通して詰めていく。一方通行ではなく、ディスカッションしながら最終的な値段を決めていくんです」
10年で12倍成長を遂げる家電事業
その結果が毎年1000点もの「新商品」に繋がり、驚くべきことに、それが全商品の約6割を占めている。「技術という側面では後発組ということもあり、まだまだ他社に比べて劣っている」と素直に語る原氏だが、一方で他社にはない強みもある。
「1つのメーカーで家電のほかにも日用品や水、お米など多品種を扱っていることです。また製造から販売まで全て自社で抱えているからこそ、異素材同士を組み合わせた家電が生まれることもある。その時代によってお客様ニーズは変化しますので、柔軟に対応していくためにも、新商品を常に出して、それに応え続ける必要があると考えています」
事実、アイリスオーヤマの家電事業は、コロナ禍にもかかわらず、2010年の100億円から2020年には1250億円と、12倍超へと成長している。
原氏は「幸いなことに、巣篭もり消費の増加や在宅時間が長くなったことで、家電の買い替えや暮らしを豊かにする贅沢家電の需要が伸びました」とし、今後の展望を述べる。
「まず国内では2017年から参入した冷蔵庫や洗濯機、エアコン、テレビなど白物家電はまだ品揃えが十分ではないゆえ、今後の成長の肝になると考えています。また、グローバルではEコマースを中心に販売していますが、サーキュレーター技術を用いた空調家電など換気を促すような商品のニーズが高まっています」
ガラパゴス化とも言われる日本の家電市場。生活者にとって「値ごろ感」とほど遠い家電が多いなか、アイリスオーヤマらしい商品展開を今後も期待したい。
<取材・文・撮影/古田島大介>