元NHK・登坂淳一アナの仕事論。「やりたくないこと」を考えるのも大事
目線を合わせないと、「説得力」が生まれない
――関西時代は、自ら現場に向かい、疑問をぶつけていく「闘うキャスター」としても話題でした。たくさん悩んで、「次にどうしたらいいか」を考え続けることがスキルの積み重ねにつながるともいえそうです。「選んでもらう」方法を試行錯誤するなかで、実感に手応えがあったものはありますか?
登坂:札幌支局に異動になった時(2010年3月)に、やはりここで見てもらうためには「道民」になることだと思いました。1人の道民になりきって、地域のことを知って、発信しようと。やっぱり自分から“入って”いって、そこからの目線にならなければ、相手にも伝わらない。
――“目線を合わせる”。
登坂:いつも、目線を同じにすることはすごく意識していたと思います。そうしないと、ともすれば「上から目線」と思われがち、見られがちな組織にいましたから。NHKにいたら転勤が避けられないのは事実ですが、僕はここでずっとやりますよっていうぐらいの気持ちでやっていました。
北海道で何が発信できるか、自分でできることは何か、常に考えて。自分で企画をつくって、(当時市販が開始されたばかりだった)ブランド米「ゆめぴりか」の生産者に密着して、田植えから収穫までを取材したりしました。
――価値観も変わりましたか。
登坂:その頃お世話になった方々とは、今でもお付き合いがあります。東京だとどうしても消費者目線という価値観になってしまいがちなところが、北海道に行ったことで、「生産者」という180度反対の目線で考える体験ができた。それは、すごく大事なことだったと思います。
「やりたくないことは何か」を考えるのも大事
――仕事やキャリアについて。「どんな仕事をしたらいいのか」「どうやってキャリアを作っていけばいいのか」わからなくなっている若者も多いです。
登坂:何かを選ぶ時には、情報の取捨選択が必要になりますよね。でも、今はたくさん情報があるから、全部見ていくと、溢れてよくわかんなくなる。どんな仕事をしたいか、どんなキャリアを作っていくかわからなくなった時、自分にとって必要なのは、まず「何のために仕事をするのか?」っていうことなのかな。
「どんな仕事をしたいか」と、「何のために仕事をするのか」。あとは、「やりたくないことは何か」を考えてみることも大事ですよね。
何をしたらいいかわからないという時は、もっと考えられる余地があるということ。自分と向き合って、自分がやりたいこと、やりたくないこと、あるいはできることを、自問自答しながら考えて考えて、整理して、具体的な行動プランに落とし込んでいく。
「こういうことを成し遂げたい」とか、「お金を稼ぎたい」とか、どんなことでもいい。就活の時に、多くの人が一度はやっていることです。それを、常にやり続ける。