江頭、オリラジ中田…バズる「芸能人YouTuber」はどこが違う?VAZ代表・森泰輝が未来予測
YouTubeはたちまちレッドオーシャンに
――今後芸能人がYouTubeに参戦すると、市場はどのように変化していくのでしょうか。
森:「YouTubeを利用する年齢層の引き上げ」、そして「コンテンツのプロ化」という2つの変化がやってきます。
YouTubeは現在も30~40代の利用者を数多く抱えていますが、若い世代のように「チャンネル登録して動画を見る」習慣はありません。しかし、芸能人が数多く参戦することにより、彼らがYouTubeをテレビのように利用するようになります。録画予約をするようにチャンネル登録をし、単に「若者のプラットフォーム」ではなくなっていくでしょう。
また、江頭2:50さんを見れば一目瞭然ですが、芸能人はネタのポテンシャルが高く、ルックスに秀でた人も多い。存在そのものが強みなので、彼らが動画をアップすることにより、YouTube全体で求められるコンテンツの水準が上がっていきます。
さらに今後、テレビ局も参戦すると考えられるため、工夫を凝らしたコンテンツがますます増えていく。“テレビ番組さながら”の動画がどんどんアップされるようになります。
――なるほど……。既存のYouTuberにとっては、苦しい展開になりそうです。
森:「影響力=ファン数」ではないですが、芸能人がYouTubeに本気でコミットすれば、既存のYouTuberたちを差し置き人気を獲得していくこともあり得るでしょう。
その実、2020年2月の登録者数ランキングは、トップ3が芸能人のチャンネルでした。また、2018年10月1日に「2019年、年末までに登録者数100万人に行かなかった場合、芸人を引退したいと思います」と自身のチャンネルで宣言したカジサックさんも、現在(2020年4月時点)登録者が190万人を超え、トップYouTuberの仲間入りを果たしています。
「個人の時代」ブームが終わりチーム戦へ
――現在は新型コロナの影響で自宅で過ごす時間が世界的に増えています。同時にYouTubeの再生数も増加していると聞くのですが、その影響はどうでしょうか?
森:たしかに再生数自体は大きく伸びています。ただ、YouTubeでの収益がそのぶん伸びているかといえば、そうではなくて。広告収入はYouTubeへの出稿量と再生数のバランスで決まるので、いち再生あたりの単価はむしろ下がっていますね。この傾向はしばらく続きそうですし、決してYouTuberに「コロナ特需」が訪れているわけではありません。
――では、今後レッドオーシャン化していくYouTube市場を勝ち抜くには、どのような戦略が必要になるのでしょうか。
森:芸能人であるか否かに限らず、“チームで戦う”ことが求められます。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、トップYouTuberの中で、個人で企画からアップロードまですべてを行なっている人はほとんどいません。面白い企画を立てる、魅力が引き立つカットで撮影する、企画が際立つ編集をする……と、それぞれの工程に担当者がいます。
数年前から「個人の時代」ブームが起こりました。「好きなことで、生きていく」というメッセージングがあったことからも、YouTuberはその象徴的な存在だったかもしれません。しかし、結局のところ、ひとりでは遠くに行くことができません。もう大半の人たちが、その事実に気づき始めています。