UberEats 配達員から感染の恐れも。ユニオンが訴えた現場の実態
感染したら強制的に「アカウント凍結」?
それ以外にもウーバージャパンは配達員がウイルスに感染して働くことができなくなった場合に「過去6か月分の平均収入に基づいた14日分の経済援助」を提供することを発表している。しかし、これも素直に報告したところで、しっかりとした補償が行われる可能性は低いという。会見に同席した川上資人弁護士は海外の配達員の事例をこう述べた。
「アメリカのウーバーイーツ配達員が、ウーバー側に『新型コロナに感染したから補償してほしい』と伝えたところ、一方的にアカウントを凍結させられたあげく、何の補償も得られなかったという事例があります。また、日本の配達員の感染実態について、ウーバーに求めましたが『回答できない』とのことでした。ウーバー側はあくまでも配達員の自己責任として対応しようとしているのではないか」
他社では、中国発フードデリバリーサービス「DiDiフード」(運営:DiDiフードジャパン株式会社)は4月7日より大阪で、事前に全配達員に15枚のマスクを配布する実証実験を開始している。また流通業者ではヤマト運輸、佐川急便も同様の対策を講じている。
「仮に配達会社のドライバーが新型コロナに感染して、複数の利用者が感染した場合、もし会社側に安全配慮義務違反があれば、その会社は補償などの法的責任を負うことになります。一方、ウーバージャパンと配達員はあくまで個人事業主の業務委託関係です。法的責任はないと言われてしまうかもしれないうえ、会社の責任を立証するのは被害者。これは昨今のプラットフォームビジネスの構造的問題だと思います」(川上氏)
一方的な「置き配」通達に現場は混乱
また、ウーバージャパンは配達した荷物を玄関横などに置く、いわゆる「置き配」といった注文者との接触を制限し、感染リスクを低減する対策を講じている。しかし、これに関しても「一方的にアプリ上で通知されただけだ」と、鈴木氏は語る。
「3週間前に一方的に仕様変更があり、配達員には後日アプリ上で説明はあったものの、利用者には説明がなく、利用客のなかには『勝手に配達員が置いて帰った』と思い、低評価をつけるケースがあります。いまだに利用者に対する説明がなく、勘違いしている人も多い。同様に感染リスクが懸念される“現金徴収”も対策を講じることなく、配達員に代行させたままです」
繰り返すがウーバージャパンと配達員の関係はあくまで個人事業主としての業務委託関係である。配達員も任意によって配達を行っている。しかし、感染リスクがあるのはこうした現場の最前線にいる人たちだ。会見中、鈴木氏は「ウーバー側は配達員の自己責任としているが、配達員としてもウーバー側に管理するように求めていきたい」と述べた。
ウーバーイーツユニオンが定めた申し入れの回答期日は本日10日。しかし今のところ回答はないという
<取材・文・撮影/シルバー井荻>