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新型コロナ対応、プロ野球とJリーグで違いが…。試合は延期すべきか?

暮らし

すでにJリーグは動き出している

 一足先にレギュラーシーズンをスタートさせているのが、サッカーのJリーグだ。

 J1のヴィッセル神戸は、開幕戦で「応援歌合唱の取りやめ」「肩組みの禁止」「鳴り物応援の取りやめ」などの措置を取った。スポーツニュースでは、ほとんど全員マスクを付けたサポーターの姿が印象的に映った。

 2019年に15年ぶりのJ1優勝を果たした横浜F・マリノスも開幕戦を主催。34521人が集まり、新型コロナ上陸後のスポーツ興行としては最大級の人出となった。F・マリノスも、ファンサービスの見合わせなどの対策を打ち出している。

 ……と書いている今このタイミングで、2月28日~3月15日に開催予定の「2020明治安田生命Jリーグ」および「2020JリーグYBCルヴァンカップ」すべての試合の開催延期が理事会より発表された。これは冒頭で紹介した「瀬戸際宣言」を受けての決定だとされている。

 セ・リーグとパ・リーグに分立した経緯のあるNPB(日本プロ野球)と比べても、運営母体に権力が集中しているJリーグの場合、トップダウンの決定を下しやすい。これは一長一短だが、危機管理のシステムとしては一歩進んでいると言えるはずだ。

「試合中止」で出る損失とは

「野球人気の低迷」が言われて久しいが、テレビ視聴率とは逆に、野球場への入場者数は右肩上がりでの伸長を見せている。現代では、この“現地観戦”をする観客による収入が球団経営を支えている。

 試合を開催するチーム(ホームチーム)には、入場料のほか、テレビ・ネット中継への放映権料、飲食・グッズの売上などが入る。球団によって幅があるが、1試合あたり約1億円の利益を稼ぎ出していると考えれば差し支えないだろう。

 試合を中止するとなると、前売り券の入場料も払い戻さなければならず、この儲けがざっくりゼロになる。ただし、中止した試合は別の日程に振り替えて催されるので、経営へのダメージは最小限になっている。

 溜まった振替試合を消化するために、1日のうちに続けて2試合を催すこともできる。いわゆる“ダブルヘッダー”であり、プロ野球ではかつて当たり前に行われていたが、選手への負担が大きいことから避けられるようになり、1998年を最後に開催されていない。

何が“最悪の事態”なのか

予防注射

 観客だけではなく、選手やスタッフに感染者が発生することにも大きな懸念がある。

 プロアスリートはふつう、インフルエンザなどの予防接種を打っている。プロ野球でも、選手がインフルエンザに罹患(りかん)し登録抹消となる例はあるが、チーム内での流行にまで至っていないのは、予防接種のためである。

 しかし新型コロナの場合、有効なワクチンがまだ実用化されていない。もしも宿舎や選手寮で感染者が発生した場合、被害はチーム全体、場合によっては対戦相手のチームにまで及ぶことになる。

 あまり考えたくないことだが、万が一にでも選手に死者が出たらたまらない。それこそ“前例のない事態”となってしまう。これを避けるために全力を尽くすのが、あるべき危機管理の姿だろう。

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