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20代男子・特殊清掃人が「孤独死現場」で見たもの

学び

故人の部屋からは生活動線も垣間見える

伊豆さん

過去の経歴もふまえて「裏方の仕事が好き」だと話す伊豆さん

 これまでこなしてきた現場を振り返り「トイレで亡くなられていた方の現場」が、印象的だったと話す伊豆さん。当時の状況を詳細に伝えます。

「3LDKの賃貸マンションで、不思議とリビングなどの生活空間はキレイでした。おそらく急死された方で、トイレの床に溜まっていた2~3cmの体液の中からメガネを発見したので、それほどになるまで発見されずに顔が崩れていたんだろうと思います」

 家主のいない部屋からは故人の生活動線も見えてくるらしく、特殊清掃という仕事を通して、過去の経験が「活かされている部分もある」と話します。

「住宅設備関係の会社で配管工をしていたので、水回りへたずさわるときには当時の知識が役に立っていますね。トイレの床に体液が染み込んでいる場合には、それを活かしてどの配管を切るべきかと見極めています。

 また、特殊清掃の現場ではスピードを第一に心がけています。状況にもよりますが、原則として一日で終わらせなければ費用や立ち会いの時間も考えるとお客さんの負担になりかねないので、とにかくすみやかに作業しようと意識しています」

特殊清掃は好奇心旺盛な人に向いている

伊豆さん

動画からも「現場を想像できるようになってきた」と成長を明かす伊豆さん

 一方で、力むと死臭が鼻を突いてくるので「重いモノを持つときには、力加減を工夫するようになりました」とも。

「現場を実際に味わうようになってから、近所の人同士でゴミ出しのときにほんの少しでもいいから、声をかけ合うような関わり合いが大切だと考えるようになりました。個人的にも、半年に一度しか会わなかった一人暮らししているおばあちゃんへ、定期的に連絡するようになったんです。

 今は先輩に付き添って作業をすることが多いのですが、いずれは後輩も育てながら、孤独死を防ぐために高齢者の見守りなどにもたずさわっていきたいです」

 特殊清掃の仕事に向いている人については、自分の経験を振り返りながら「きっと、物事の理由を考えられる好奇心旺盛な人に向いていますね。ただ、故人の死に対して深く入り込み過ぎてもいけないし、一方で、軽く見てもいけない」と、この仕事ならではの難しさもあるようです。

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