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「人生で本当にやりたいこと」を見付ける方法は「嫌いな人を3人思い浮かべる」

「就活」の間も、社会に出てからも、仕事に慣れてきた時でさえ「この仕事を選んで良かったのか」「自分が活躍できる場所が他にあるのではないか」と迷ってしまうビジネスパーソンが少なくないはずだ。

生き生きと仕事に取り組む同僚や先輩が居るとなおさら考えてしまうのではないか。

SNS(会員制交流サイト)を開けば、20代で起業して成功しているインフルエンサーの活躍も目に入ってくる。この違いは一体、どこからくるのだろう。

そんな漠然とした不安や迷いを解消するべく今回は、ワンネス株式会社(東京都港区)の代表取締役にして、潜在意識アカデミーを主宰する石山喜章(よしあき)さんに、自分の本当にやりたいことを自問自答しながらロジカルに導き出す方法を聞いた(以下、重田信さんの寄稿)。

ライブドア事件の渦中で生かされた知見

今回、話を伺った石山さんは、潜在意識の領域にアプローチしながらコーチングしたり、企業研修をしたりする専門家だ。

経歴は異色で、2003年(平成15年)から2005年(平成17年)まで、ライブドア社(現・NHN Japan)のメディア事業に携わった人でもある。

しかし、6名から600名に3年で社員が拡大する多忙な日々は、刺激的ではあったもののトラブル続きでもあったそう。その厳しい状況を石山さんは打開するべく、人間の意識に着目し、世界中の識者を訪ね、無意識や潜在意識への知見を深めた。

ライブドア事件の渦中でも、トラブルの解決のために学んだ知見が生きたそう。その経験から現在は、潜在意識を軸にした人材育成事業を手掛けている。

石山さんには、潜在意識に関する著書も複数ある

インタビュー後に筆者も、石山さんに教えてもらった方法で、自分の潜在意識を探ってみた。

フリーランスのライターとして活動する筆者の判断基準が明らかになり、ライターとしてはともかく、フリーランスという選択肢を選んだ人生は間違っていなかったとあらためて感じた。

この簡潔にして意外な方法は恐らく、人生で本当にやりたいことが見付けられない若い人たちにも役立つと思う。そこで、その方法論を、インタビュー形式で以下にお伝えする。

価値観の裏には、何に価値があるかを判断する物差しがある

―― 「自分のやりたいことをロジカルに導き出す方法」について今日は聞かせてください。よろしくお願いします。

ただ、その前に1つ、前提部分についてお伺いしたいです。そもそもなぜ人は、自分のやりたいことが分からなくなるのでしょう。

石山喜章さん(以下、敬略称で石山):端的にお答えすると、何をしたら自分の心が満たされるかを分かっていないからですね。

まず、本質的なお話からさせてください。大前提として人間は「自分の存在感」を求める生き物なんです。「存在感」とは、言い換えると「自分が存在していると分かる刺激」になります。

例えば、スポーツやゲームで勝つと喜びを感じます。ビジネスでお金を稼いだり、知名度が上がったりした時も「成功した」と達成感を得られると思います。

好きな人に愛される、もしくは、恋敗れて悲劇のヒロインになるでも構いません。悲劇のヒロインも不幸に見えて不幸が刺激になり「存在感」を得ているのです。

一方で、私たち人間は、その刺激にもだんだん慣れてくる生き物です。

あなたが、カレーライス好きだとしても、カレーライスしか食事に出てこなくなったら普通は飽きて、他の食べ物がほしくなりますよね。

しかし、20代半ばで、自分が手に入れられる刺激は多くの場合限られています。現代社会は情報があふれているので、選択肢が多いように錯覚しているだけです。

私たちの満足度は、期待値が分母にあって、実際の刺激が分子になります。分母の期待値よりも分子の刺激が多いと満足度が高くなります。

(キラキラした)期待させるような情報(分母)が多すぎるのに、実際に体験して手に入る刺激(分子)は少ない。そうなると当然、マンネリ化が始まり、満足感が得にくくなります。

満足感が得にくい状況が続けば、何をすれば自分の心が満たされるのか分からなくなります。

その「何をすれば自分の心が満たされるのか分からない」という裏側の気持ちが「自分が何をしたいのか分からない」と表に出てくるのです。

若い世代の人たちが、やりたいことを見つけられなくても別に不思議ではありません。むしろ、当たり前と言っていいくらいです。

―― 言われてみると確かに、おっしゃるとおりです。ただ、中には、やりたいことが若くてもできている人もいると思います。

その手の人は、自分が何をしたら満足するのか知っている人なのでしょうか。

石山:そうです。自分の判断基準、価値観が自覚できているか否かの違いですね。

「価値観」と言ってもその裏側には当然、何に価値があるかを判断する物差しがあります。

この判断基準を自覚できている人は、どうすれば自分が満たされるかが分かっています。

判断基準が分かっていない人は一方で、自分が誰に出会った(何と出合った)ら、何をやったら満足するのか分からないので迷うんですね。

ネガティブな経験からやりたいことを見付ける

―― その判断基準をベースに、自分のやりたいこと(満たされること)を見付けていくにはどうすればいいのでしょうか。

石山:方法は2つあります。まずは「ひどい目に遭う」です。

「ひどい目に遭え」といきなり言われても戸惑うと思いますが、社会起業家の方の中には、悲惨な体験をしている人が少なくありません。

アフガニスタンに用水路をつくった医師の中村哲さんや、bizSPA!フレッシュにも取材記事が掲載されているEarth Companyの濱川明日香さんは、発展途上国の現場を見て「何とかしたい」という気持ちに突き動かされ行動してきた方だと思います。

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もっと身近な例で言えば、理不尽な先輩に職場でいじめられたため「出世して組織を変えてやる」と奮起する人もいます。

「女性だから」という理由で納得いかない処遇をされ、ダイバーシティを広げるための会社に転職する人もいます。

自分や誰かが、人としての尊厳を脅かされる心理状態に陥ると「何とかしたい」と人間は渇望する生き物です。

弓矢をイメージしてください。弓を引くと、矢は引いた方向とは逆に飛んでいきます。力強く引いた分だけ、矢も力強く飛んでいきます。この弓矢を引く行為と、ひどい体験って同じなんです。

実際に、ネガティブな経験が、強いエネルギーや意志を生み出し、そこからやりたいことを見付けるパターンはよくあります。

とはいえ「ひどい目に遭え」と言ってもアドバイスとしては現実的ではありません。そこで、もう1つの選択肢として、潜在意識を見る方法があります。

人生の99%をコントロールしている「運転手」

―― 潜在意識という言葉そのものはよく聞きますが正直、とっつきにくい印象があります。ちょっと怪しいというか。潜在意識についてご説明いただいてもよろしいでしょうか。

石山:分かりやすく例えるなら「あなたの人生の運転手」という表現が一番いいと思います。

歯磨きって、何も考えなくても磨けるじゃないですか。お風呂に入るのも歩くのもご飯を食べるのも全部、無意識に行っていますよね。

メールを打ったり、LINEで返事したりする瞬間も、自分で考えているようで、潜在意識が99%、内容を考えて打っているんです。

あなたが誰に好意を抱くのか、誰と仕事をしたりプライベートで付き合ったりするのか、どんな関係を築きたいのかも実は、無意識のうちに決まっているのです。

人生の99%をコントロールしている「運転手」があなたの潜在意識なんですね。なので、この潜在意識を見て、自分が誰と出会った(出合った)ら、何を食べたら満足するのか、自分の物差しを探るんです。

とはいえ、潜在意識も、無意識の1つです。無意識は大きく3つの層に分かれています。上から「潜在意識」「自律神経系」「集合的無意識」と呼ばれています。無意識を意識するとは難しく聞こえるかもしれません。

現に「自律神経」で動く心臓を自分の意思では止められないし、脈も変えられません。

個人ではなく種族や民族、人類などに共通して伝えられる「集合的無意識」も、個人よりもはるか奥深くに存在する領域のため、自分でコントロールできません。

ただ「潜在意識」だけは、顕在化できる(形となって現わせる)んですよ。

プロのスポーツ選手たちは、無意識なフォームを意識化して顕在化させるだけでなく、トレーニングを通じて変化させ、無意識にまた落とし込む作業まで行っています。

自分の体の動きが無意識に変われば、パフォーマンスが向上していくからですね。

潜在意識とパフォーマンスの関係。ワンネス株式会社による提供

―― 具体的に、無意識に属する潜在意識をどのように意識して顕在化させるのでしょうか。

石山:まず、自分にとって嫌いな人や苦手な人を3人挙げてください。

―― 嫌いな人ですか?

石山:はい。次に、その3人が言った言葉や行動、表情を思い出してください。

その記憶の中で、自分が「イラッ」としたり不安になったりした状況を思い出して、1人につき10個ずつ、ノートに書き出してみてください。

「家族や友人のあの表情を見てイラッとした」だとか「〇〇なことを上司から言われてひどく落ち込んだ」だとか、自分の感情が動いた瞬間を書き出していくんです。

3人×10個で30個出てきますよね。この30個のポイントを眺めると、あなたにとっての善悪や好悪の基準が見えてくるんですよ。

例えば、友人が遠慮している表情をしていて「何か思っていることがあったら伝えてほしいな」と思ったら「相手の考えを知りたい、思ったことは伝えてほしい」という基準があなたにあると言えます。

同僚から「頑張って」と言われて「あなたもやることあるでしょ」とカチンときたら「自分の役割は全うすべき」という基準があると言える。そういうふうに感情が反応しているからです。

書き出された自分の感情を眺めていくと、似たような物差しがあったり、共通項が出てきたりするのでグルーピングしてください。

「私にとっては『筋を通す』が大事なんだ」だとか「楽しければルールを破ってもいい」だとか、あなたの内面の基準が見えてきます。

もちろん、あなたの内面の基準が社会と適合するかどうかはまた別の話ですが、自分の軸・物差しが見えてくると、その条件に当てはめながら、自分にぴったりな仕事や業界、ポジションを探せるようになります。

「筋を通す」が自分の軸なら、弁護士や法務関係の仕事が向いているかもしれません。「正義感」が軸の人は警察官や官僚が適職かもしれません。

ただ、基準を知っても、若い人は特に、世の中にある選択肢そのものを知らない可能性もあります。そこで、プラスアルファで、いろいろな世界を知っている先輩にも聞いてみてください。

直属の上司に聞きにくい場合は、斜め上の課長や隣の部署で親しくしている先輩など、気軽に相談できる人に、自分の軸、物差しを基準にした時、どんな職業やポジションが世の中にあるのか聞いてみるといいでしょう。

もちろん、見聞を広げるために、セミナーや交流会に行ってもいいと思います。

石山さん主宰のセミナーの様子

人生に影響を与える潜在意識

―― 実際に、この方法で人生が変わった方のエピソードを教えていただけますか?

石山:弊社のプログラムの卒業生に、チョコレートアーティストとして現在活躍している小林愛花さんという方がいます。

もともとは、スイーツの開発にローソンで従事されていて、有名テレビ番組〈ジョブチューン 〜アノ職業のヒミツぶっちゃけます!〉(TBS系列)にも2度出演されているような方です。

その方が、やりたいことを前述の方法で見付け、チョコレートを巡る世界一周の旅に出ました。

7カ国・31都市を約3カ月で回り、各地のカカオ農家やショコラトリー、パティスリーを訪れ交流を深めた上で、独自のチョコレートブランドを帰国後に立ち上げました。

チョコレートアーティストになられた後は、小学校や中学校に呼ばれて講演したり、NHKに取材・放送されたりしています。

自分の使命が見つかると、ここまで突き進められると分かる成功例ですね。

―― 自分の判断基準を探す方法は、適職探しにとどまらず、人間関係や仕事でのトラブルにも生かせるのでしょうか。

石山:もちろんです。この方法は、自分の人生の核となる判断基準を見付ける方法です。

相手から受けた言動に対する自分の反応や感情がどこから来ているのか分かるようになります。私たちは普段、自分の核となる判断基準をベースに、会話したり、メッセージに返信したりしているからです。

自分の核が分かれば、人間関係も変わってきます。人間関係がベースとなって仕事の結果が出ているので、人間関係が変われば、仕事の結果は見違えるほど変化するんです。

実際に、うちの受講生は営業の業績が上がったり、職場の人間関係のストレスが減ったりといった変化が続出しています。

この方法を試すだけで、これまで歩んできた自分の人生がなぜそうなってきたのか、良くも悪くも根拠が分かります。

潜在意識の部分へのアプローチは、今後の人生全てに影響を与えられるノウハウの1つだとも思えるはずです。

―― 興味深い話が続きましたがそろそろ、約束のお時間の終わりが迫ってきました。最後に、もう1つだけ聞かせてください。

仮に、教えていただいた方法で自分の核というか、判断基準が見付かったとして、その人生の「運転手」である判断基準そのものを変えたいと思ったら変えられるのでしょうか。

自分の核に合った適職を探し、自分のやりたいことを見付ける方法もあると思います。一方で、見付かった自分の判断基準そのものを変え、人生を劇的に変えていきたいと思ったら可能なのでしょうか。

石山:もちろん、変えられます。ただし、潜在意識は、無意識の1つとお伝えしました。顕在化させた上で変えていくとなると、スポーツと同じようにトレーニングとコーチが必要となります。

その場合に、弊社が提供するプログラムのような機会が重要になってきます。ご興味があればぜひ、弊社の潜在意識コーチング®ものぞいてみてください。

ちょっと最後は宣伝っぽくなってしまいましたが(笑)

―― 見事な締めくくり、ありがとうございました(笑)

潜在意識へのアプローチはビジネスパーソンにもとても大事な話だと思います。また、別のテーマでも話を聞かせていただくかもしれません。引き続き、どうぞよろしくお願いします。今日は、ありがとうございました。

[取材・文/重田信 写真・画像提供/ワンネス株式会社]

[取材協力]
石山喜章・・・潜在意識アカデミーや組織開発コンサルティング、企業研修、コーチングを手掛けるワンネス株式会社(旧社名CCO)代表取締役。株式会社バルコス非常勤監査役、ベンチャー企業の顧問などを務める。主な著書に〈世界が一瞬で変わる潜在意識の使い方〉(あさ出版)、〈ビジネスで結果を出す人には“自己肯定感”がある! 潜在意識から「自分」を変える方法〉(大和出版)など。

奄美大島出身。大阪府在住のライター。 タイと中国の日本人学校に教員として通算8年間勤務。 帰国後、フリーのライターへ。 補習校講師として、オンラインで国語を教えています。

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