住民猛反対で「国費30億円パー」になった土地をまとめ上げた、業務スーパー創業者の“驚きの提案力”
新型コロナやロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、エネルギーや食料の高騰など、輸入に頼っていた日本が受けた打撃は少なくない。そのため、エネルギーや食料の自給率アップを叫ぶ声が強まっている。そのどちらにも貢献が期待できそうな第三エネルギー「地熱発電」に取り組む企業が、株式会社町おこしエネルギーだ。
インタビュー記事の前半では注目はされたが主要エネルギーに変わることが難しかった地熱と、風力や太陽光発電との違いについて、同社事業開発部の部長・岡本道暁氏に話を聞いている。後半となるこの記事では、地熱開発を成功へと導いた要因や地熱が日本の化石燃料に変わる具体的な日にちについて聞いた。
【前回の記事】⇒≪業務スーパー創業者が100億円以上をかけて“2度目の起業”、その責任者を直撃≫を読む
熊本の小国町で掘削をスタートさせた理由
町おこしエネルギーは、全国47都道府県あるうちの熊本県阿蘇郡小国町で最初に地熱事業を手掛けている。
「地熱は地球内部にある熱源ですが、日本全国どこにでも存在するものではありません。地下のマグマにより発生する地球のエネルギーは、火山のある地帯しかないのです。なので、関東や関西では、いくら探しても地熱が出るような場所はありません。
北海道、東北、九州のエリアで火山のあるところ。とくに九州には、鹿児島にある桜島や熊本の阿蘇山があり、熊本県小国町の近くには涌蓋山という火山もあり、その周辺には、九州電力が手がける八丁原という110MW(メガワット)の日本一の地熱発電所もあります」
住民猛反対で中座した地熱開発
そのため、熊本県の涌蓋山の周辺は地熱を掘削できる非常に有望なエリアとされていた。そして1985年頃には、当時は国の機関で現在は民間になっているある企業が国費を30億円以上投資しして、一帯を開発している。しかし地元の温泉組合から猛烈な反対を受け、開発は途中で断念。その当時から土地は塩漬けにされていたのだ。
「その土地をなんとか引き継げないかということで、私どもが現地へ出向いたという経緯です。当然ほかの大手企業もたくさん交渉しに行っていました。思い出せるだけでも7~8社。それでも、なかなか地元との合意形成がうまくいかなかった。
では、なぜ我々はうまくいったかというと、地熱発電だけでなく、地熱を利用した畜産や水産といった事業の立ち上げや地元の雇用促進など、地元に貢献できるようなプランを提案できたことがひとつです」