若者に知ってほしい…太田胃散が「ゆるキャラ」「ももクロ」と組んだ意図
胃のトラブルは飲み過ぎによる胃もたれやムカつき、ストレスが原因で起こる胃痛などさまざまな要因によって引き起こされる。そんななか、発売以来140年以上にわたって多くの人に愛されているロングセラーの胃腸薬として知られているのが「太田胃散」だ。
最近ではゆるキャラを起用して新たな顧客層へもアプローチするなど、既存の医薬品の枠にとらわれない取り組みを行っている。株式会社太田胃散 AD顧客部 広報グループの藤井かおる氏に、支持され続ける理由について話を聞いた。
目につく場所に広告を出して普及
太田胃散は、薬局やドラッグストアに行けば手に入れることができる市販薬(OTC医薬品)だ。藤井氏は太田胃散が普及した理由について「各家庭にある常備薬として認知されたこと」が大きな要因になると説明する。また、発売当初から行ってきたさまざまな広告も普及に一役を買っているという。
「生活者の目の触れる場所に、広告を出していったことで太田胃散の名が少しずつ知られるようになりました。明治時代に入ると、生活者が自然と『胃腸薬なら太田胃散』と想起できるよう、ラジオや新聞広告、バス停や電柱の屋外広告など日常的に目がいく場所を意識して、さまざまな広告展開をしてきました」
また、当時は太田胃散以外にも胃腸薬を謳った偽物が出回っていた時期で、薬局や問屋に製品名の「太田胃散」と屋号が入った看板(通常:金看板)を掲げてもらうことで信用を得ていたという。
胃腸にまつわることなら何でも解決する
「今ではほとんど見かけませんが、金看板を掲げるお店は正規品を扱っている薬局の証で、そこに行けば太田胃散を買えるという認知がされていきました。こうしたことも、太田胃散が次第に家庭の常備薬として普及していくきっかけになっています」
そもそも太田胃散は創業者の太田信義がもともと胃弱であり、胃の不調を感じた時に緒方拙斎(緒方洪庵の娘婿)から処方された胃薬に出会った。この胃薬のもとの処方はオランダ人医師アントニウス・ボードウィン博士のものであった。その処方を基に多くの日本人が飲みやすい内容に処方を変更し、太田胃散を売り出したという。
文明開化以降の日本の食の欧米化は1970年代頃から急速に進み、胃腸への負担が増えていった。このことも、胃腸薬のニーズが高まった時代背景だという。