PayPayが独走するスマホ決済。行動ログから未来を予測
いよいよ消費税が10%に増税され、キャッシュレス決済で最大5%が還元されるキャッシュレス・ポイント還元事業が始まりました。
PayPayの2018年末「100億円あげちゃう! キャンペーン」に端を発したスマホ決済アプリの熾烈なバトルは成熟期を迎え、認知や新規獲得から「お財布」としての定着、ユーザー囲い込みへと軸足が移ります。
独走のPayPayを追う「通信キャリア系」
そんななか、2019年11月18日にはPayPayの親会社であるZホールディングス(ZHD)とLINEの経営統合というビッグニュースも飛び込みました。株式会社ヴァリューズによる国内スマホユーザー行動ログから、国内のキャッシュレスユーザーの動向を見てみたいと思います。
行動ログからわかったのは、この1年間市場をリードしてきたPayPayがやはり独走中。10月の起動ユーザー数は推計で2100万人に上り、IR資料によると単月で8500万回決済に利用されました。
PayPayに次ぐのはd払い、au WALLETの通信キャリア系。結局、スマホと月々の通信料という顧客接点を握るプレイヤーが、ユーザーにとって一番身近だったといえるかもしれません。
au WALLETとほぼ並んだ楽天が目指すのもそこでしょう。7月時点はこれら通信キャリア系アプリに大差がなかったものの、8月にPayPayが他社を突き放し、本番10月には一挙に差が開きました。
ほかには7月から決済機能を搭載したコンビニ系アプリ・ファミペイが健闘。OrigamiやKyashといった専業系、5月に参入したゆうちょPay、同5月から決済専用アプリを投入したLINE Payは存在感を示せませんでした。
とはいえ、全体にはおおむねどのアプリもユーザーが増え、キャッシュレス社会への移行は着実に進みました。やはり消費増税はひとつのターニングポイントだったといえそうです。
主要決済アプリの併用状況からは、ロイヤリティの温度差も見て取れます。au WALLETユーザーは61%、PayPayは38%が併用なしで囲い込みに成功しているといえるものの、楽天ペイは67%、d払いは47%がPayPayも併用し、シーンによって使い分けている様子。
キャッシュレス政策への影響は?
予算4000億円(7000億円への増額も検討が始まりました)を投じるポイント還元事業は、景気対策と中小店舗支援に加え、2025年までに決済比率40%を目指す、キャッシュレス社会へ向けた政策の一環でもあります。
現時点(2019年11月末)のキャッシュレス決済比率は20%程度といわれ、現金を管理する社会的コストの削減や人材不足に悩む小売現場の生産性向上、データ活用による金融リテラシー向上、またマネーロンダリング対策といった社会課題解決が期待されています。
懸案の「現金」は減っているのでしょうか? 日銀が毎月発表する統計によると、対前年同期比伸び率でみた現金流通高は確かにこの数年漸減傾向で、とくに10月は高額紙幣の利用が減っています(増税でそもそも高額消費が減った面もあるでしょうが)。
500円を除くと硬貨の利用も減少傾向で、とくに1円、5円は前年同期の流通量を下回るマイナス成長です。少額な割に取り違えリスクが高く、自販機で使えないなど厄介な小銭から、着実にキャッシュレスは進んでいるといえそうです。
なお、4月に流通量が突出したのは、10日間に及ぶ超大型連休で現金を引き出したひとが多かった影響とみられます。500円玉だけが増えているのは、アプリが使えないことも少なくないランチ、あるいはタンス預金などの需要でしょうか。