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低温調理機がヒントになった焼かない焼肉屋「29ON」。業界に先駆けてサブスクを取り入れ繁盛したワケ

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肉の価値を最大化させる低温調理の可能性を見出す

そうしたなか、29ONを始めた背景については「2015年に海外のクラウドファンディングサイトで、低温調理器を取り寄せたことに端を発している」という。

「社長の髙梨は当時、まだ低温調理というテクノロジーが浸透していなかったときから、低温調理の将来性を感じていました。でも私は当初、『低温調理でお肉を焼くなんて絶対に美味しくない』と反対していたんですよ。それが低温調理機でローストビーフを焼いて食べてみたところ、予想以上の美味しさにびっくりしたんです。このときに、低温調理のすごさに気づきました」

そこから、米山氏は業態化に向けて試行錯誤を重ねるようになる。

低温調理肉のイメージ

低温調理肉のイメージ

もともとバイヤー経験があったことから、良質な肉の買い付けや目利きについては一日の長があったわけだが、低温調理という新しい調理法で肉を焼く際の火加減や時間は、何度も研究を繰り返し、最適な温度を見定めていったという。

「肉の価値を最大化し、格段に美味さを引き出す低温調理の魅力をどう生かすかについて、1年~2年は試行錯誤を重ねましたね。それこそ、肉の部位によって最適な温度が違うんですよ。例えば、鴨肉は65度で硬くなってしまうんですが、63度で調理することで、旨味が凝縮されたジューシーな味わいを楽しめる。

また、牛タンは歯ごたえのある食感が特徴的ですが、じっくり24時間かけて低温調理することにより、柔らかい食感の牛タンを味わえるようになります。そのほか、サーロインにおいては『A5ランク』のものが最も高級とされていますが、通常は『A3ランク』とあえて等級は表示しないサーロインでも、低温調理でじっくり仕上げることで、最高級ランクと見劣りしない贅沢な味を堪能できるんです」

また、ネット企業ならではのSEO対策やPR効果を狙ったクラウドファンディングにも取り組み、29ONの開業に向けた準備を進めていったそうだ。

低温調理専門店と名付けるのではなく、検索性を考慮した焼かない焼肉屋と命名し、当時はまだ黎明期だったクラウドファンディングを活用し、開業資金を調達する試みを行い、注目度を高めていった。

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