「売春島」で元教職員が取り組む“地域おこし”の全貌「知っていたら応募しなかった」
地域おこし協力隊の仕事と任務終了後
峠さんが携わる地域おこし協力隊とは、人口減少や高齢化等の進行が著しい地方が地域外の人材を積極的に受け入れる制度のこと。一定期間以上、農林漁業の応援や住民への生活支援など、地域協力活動に従事してもらいながら、当該地区への定住・定着を図る。
「2009年に総務省によって制度化されました。私は2021年4月に着任。島の資源である竹を利用したランプシェードづくりや島の景観整備、ホームページやInstagramによる情報発信、観光客を対象とした星空観測やSUPのインストラクターなどもおこなっています」
現在は、一般社団法人志摩ネイチャー倶楽部の志摩自然学校でシーカヤックについて修学中。地域おこし協力隊の活動後は、一般社団法人志摩アドベンチャーコンサルタンツと業務委託契約を結び、シーカヤックやSUPのインストラクターとして活動予定だ。
「今年は試験的に伊勢志摩の方々を招待してSUPを経験してもらったり、本土の宿泊施設と提携して宿泊客だけを対象としたSUP体験をおこなったりして、手応えを感じました。今後も渡鹿野島の観光事業や活性化に取り組みつつ、末永く暮らしたいと考えています」
変わりつつある渡鹿野島に初の修学旅行生
区長である茶呑さんや地域おこし協力隊の峠さんをはじめ、島民や志摩市、地元警察などの努力により、少しずつ性産業のイメージも払拭されつつある渡鹿野島。昨年10月には、本土から初の修学旅行生もやってきた。
「こういった変化は、とても嬉しいです。渡鹿野島には、島ならではの美しい景観があります。そして、峠くんのマリンスポーツもある。渡鹿野島は観光が楽しめる島だとたくさんの方に知っていただき、足を運んでもらえたらと思います」
そう語る茶呑さんは「現在は島民の数もだんだんと少なくなっていますが、観光に来られた方やテレワーク中心の方が渡鹿野島を気に入って定住してくれたら嬉しいですね」とも続けた。そしてそのためにも、渡鹿野島の観光事業拡大に日々尽力し続けると意気込む。
こびりついた負のイメージを払拭することは、並大抵ではない。けれど島を心から愛し、変えたいという強い想いが、ゆっくりと新たな歴史を塗りはじめている。
<取材・文・撮影/夏川夏実>