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酔った社長の息子に襲われて…「辞める前に意思を示したい」27歳女性の訴えは届くのか

学び

会社にも責任を問える。会社の責任は重い

――女性が受けた行為は、犯罪レベルの行為と思われますが、法律上、どのような責任を問うことができますか?

相原わかば(以下、相原):確かに犯罪レベルですね。いきなり抱きしめる、お尻を触る、胸を掴むなどの行為は、刑法の強制わいせつ罪に該当し、肩や背中であっても同様の可能性があります。強制わいせつ罪は暴行または脅迫を要件としますが、これらの行為自体が暴行に当たります。男性が酔っ払っていたからという理由で、刑事責任を免れることはまずありません。

 また、民事責任として損害賠償請求もできます。男性の行為は、セクシュアル・ハラスメントとして、民法の不法行為にあたります。さらに本件は、会社の宿泊行事での出来事なので、会社は使用者責任として、男性と連帯して損害賠償義務を負います。

 女性は、懇親会の後も役員男性の言動に悩まされていますが、男女雇用機会均等法では、会社に、セクシュアル・ハラスメントに関し雇用管理上の措置をとるよう義務づけています。相談窓口を設け、適正な対処をとることなどです。女性は退職せずに、会社に被害防止措置や加害者の処分を求めることができます。

退職を考える前に…闘う道がある

セクハラ

――相手は社長の息子なので、女性としては、会社に相談や苦情申立をして、何らかの報復を受けないか心配です。

相原:ご心配はもっともです。ただ、会社に課された責任は重く、報復防止もまた会社の義務とされています。

 会社は労働者の安全を守るべき安全配慮義務を負い、セクシュアル・ハラスメントで言えば、被害者の心身回復への配慮、労働環境の調整、不利益の防止などです。会社が対処を怠って被害が続いたり、対応担当者の心ない言動で二次被害が生じた場合、安全配慮義務違反による損害賠償義務が生じます。このように会社は、加害者本人よりも高額な損害賠償金を課されることもあるのです。

 また、「報復の恐れ」に関しては、就労環境が危険な状態と客観的にいえる場合には、労働者は就労を拒否でき、その間の給料を請求できるという裁判例もあるので、女性は、会社に対し、損害賠償と共に適切な措置や環境調整を要求し、対処されるまで出社を拒否するという闘い方もあります。無断欠勤扱いされないよう内容証明郵便で通知します。この手続は、失業保険をしながら仮受給できるので、退職はその後でも遅くありません。

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