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「給料ドロボーか!」部下を叱り飛ばす“パワハラ上司”が生まれるメカニズム

学び

疑似家族で運営される会社は傾きやすい

 秋の天気のごとくコロコロと態度が変わる上司や経営者たちを見て、部下や社員など下の立場にいる人たちは、「なんだこの人は……」「気がふれているのではないか」と恐れおののいてしまうでしょう。でも、異常者にしか見えない彼らの言動は、「情」と「金」というテーマを押さえておけば、理解できます

 前述のように、多くの経営者や上司は、ちやほやされたいがため、部下に「情」を求めます。「これまで『金』はある程度稼いだのだから、もうこれ以上はいらない。俺が本当に欲しかったのは家族なのだ。これからは『情』の世界で生きていきたい」と。

 経営者や管理職の立場からすれば、「金」があれば部下や社員たちをかわいがって、自分がちやほやされ、ずっと家父長のままでいることができる。誰にも怒られず、責められることもありません。

 しかし、「金」がなければ、本当の家族でもないのに、「情」の世界は維持できません。「情」に流された疑似家族で運営される会社は経営が傾きやすく、「金」の世界がおろそかになるという世知辛い事実と向き合わなければなりません。

「情」と「金」のシーソーゲームが行われる

お金

 すると、経営者や管理職たちは、あれほど、「もう『金』はいい」と言っていたのに、いきなり手のひらを返して、冷徹なリアリストへと切り替わります。いままでかわいがっていた社員をパワハラで追い込む。ずっと家族同然に付き合ってきた社員をリストラして辞めさせる。逆に、家父長制になじまず煙たがっていた人物を、結果が出るからという理由で突然、高い地位で登用したりする。

 その後、徹底した経営改革の甲斐があって会社が立て直されると、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」との言葉通りで、彼らは再び、「情」の世界に戻っていきます。

「情」モードに戻った途端、会社を立て直した功労者であっても一切関係なし。「情」の世界でよしよしできない生意気なやつなら容赦なくクビにします。一方、無能であっても自分になつく部下には優しくし、厚遇する。またまた、疑似家族の世界へと回帰していくわけです。

 ところが、その後、会社が傾いたら、「この給料ドロボーが!」と叫び、部下たちを責め立てる激しい日々が始まります。またかよ……。世の中小企業で人の出入りの激しいところは、だいたいこのように経営者や管理職が「情」と「金」の世界を行き来しているので、社員がついていけずに退職したり、リストラされたりしているケースが非常に多いのです

<TEXT/経済評論家 上念 司>

1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中

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