第三次ドーナツブームで復調?クリスピー・クリーム社長が語る「魔法の杖はない」
トレンドに迎合せず「定番」を目指す
こうしたなか、コンビニやお菓子メーカーなどのさまざまな事業者が毎年多くの新商品を投入し、ヒットを狙いに来るのがスイーツ市場の大きな特徴だ。熾烈さを増す市場において、KKDJではどのような差別化を行い、プロモーションを展開していくのか。若月氏は「世の中のトレンドに迎合することなく、定番になることを目指している」とブランドの揺るがない姿勢を示す。
「常にヒットメーカーであり続けるのは難しいので、流行り廃りに振り回わされない定番のブランドとして認知されるかが重要だと考えています。キーになるのが、ブランドに対する好意的な感情を作ること。クリスピー・クリーム・ドーナツというブランドが好きで、商品や体験を通して、好感を持っていただくことが購買につながることを意識しています。
加えて、サービス品質も重要で、どんなに美味しいドーナツを提供していても、サービスが良くなければ二度と来たくないと思ってしまいます。コロナ禍でお店へ来ていただいたお客様に『Thank youカード』をお渡しする取り組みを始めましたが、一時的な施策ではなく、今も継続しています。こうしたホスピタリティやお客様へのおもてなしも、ブランドバリューを高める上で必要不可欠だと考えています」
ドーナツ製造の様子が見られる店舗も
2022年は“第三次ドーナツブームの到来”が叫ばれている。中目黒と渋谷に店舗を構える「I’m donut?(アイムドーナツ) 」や池袋の「Racines Bread&Salad」といったお店には、美味しいドーナツを求めて行列ができている。世の中的にもドーナツに再び脚光が集まり始めた今、KKDJはどのような成長戦略を描いているのか。最後に、若月氏へこれからの展望を聞いた。
「2019年からはスーパーにキャビネットを設置し、セルフスタイルでドーナツを販売する『DFD(Delivered Fresh Daily)』事業をスタートしています。現在、キャビネットは160か所ほどにまで広がっていますが、今後より拡大していくことでお客様とのタッチポイントを増やしていければと思っています。
また、店舗内でドーナツ製造の様子が見られる『ドーナツシアター』を設けた店舗も、ブランドバリュー向上のために出店していきたい。2022年8月には東京国際フォーラムに国内最大のフラッグシップショップをオープンしましたが、お店でしか体験できないドーナツ体験やWow体験を創出できるよう、これからも尽力できればと考えています」
現在、KKDJは関東、中部、関西、北海道の地域に59店舗(2022年9月末時点)を構えている。大量閉店などの抜本的な改革を断行した“第二創業”から数年、KKDJは再び上昇気流に乗り始めており、今後の動向に注目が集まるのではなかろうか。
<取材・文・撮影/古田島大介>