第三次ドーナツブームで復調?クリスピー・クリーム社長が語る「魔法の杖はない」
毎年のように新しいトレンドが生まれ、ブームが巻き起こるスイーツ市場。ティラミス、マカロン、パンケーキ、タピオカ……。時代を振り返ると、実にさまざまなスイーツが注目されてきたわけだ、こうしたなか、根強い人気を今でも誇っているのがドーナツだ。
なかでも、“ドーナツブーム”の火付け役と言われるのがクリスピー・クリーム・ドーナツである。アメリカの老舗ドーナツブランドとして知られ、今年でブランド誕生85周年を迎えた。クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン(KKDJ)の代表取締役社長を務める若月貴子氏に、日本上陸10周年を節目にして経営再建に乗り出した理由や、今後の成長戦略について話を聞いた。
「ふわっ、とろっ」が日本でも話題に
KKDJは2006年に日本上陸し、2010年代半ばには、相次ぐ店舗閉鎖を行ったものの、近年では徐々に新規出店を解禁するなど復調の兆しを見せている。
2006年12月に新宿サザンテラスに1号店をオープン。アメリカでも人気のドーナツ店が、遂に日本上陸を果たすとのことで、多くのメディアが新宿サザンテラス店を取り上げた。その前評判が相まって、連日に渡る行列ができるほどの盛況を見せた。
「社内では“ふわっ、とろっ、ペロリ”と呼んでいる、オリジナル・グレーズドならではの口の中でとろける食感が、当時の日本では斬新だったことから、多くのお客様に支持されたと考えています。できたての温かいオリジナル・グレーズドを口にしたクルー(アルバイトの方)が『これは飲めます』と表現するくらい、従来のケーキドーナツのぽそっとした食感とは、一線を画すものでした」
ブームに火をつけるきっかけになった戦略
また、上陸当初のマーケティング戦略も「ブームに火をつけるきっかけになった」と若月氏は話す。
「アメリカでは1ドル未満で販売していたドーナツを、日本では150円という価格帯に設定し、プレミアム路線として打ち出したのが功を奏しました。また、行列に並んでいる間にも、サンプリングとしてできたてのドーナツを丸ごと1個配布していました。
普通、サンプリングする場合は、小分けにして配るわけですが、思い切ったサービスがお客様の『Wow体験』につながり、クリスピー・クリーム・ドーナツの認知度向上やファンの醸成に寄与したと思っています」