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子育てと仕事の両立は“無理ゲー”か?「若者の恋愛離れ」を後押しする複雑な要因

学び

こども家庭庁は子育ての負担を減らせるか

高橋幸

高橋幸『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど:ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(晃洋書房)

 そして、「結婚したい」「子供を持ちたい」と考える若者を増やすための具体的なアイデアを聞いてみよう。

「現代の若者は、自身を取り巻く雇用環境が不安定であり、賃金がなかなか上がらない経済状況を生きてきました。そのため、子育てに関する金銭的・労力的負担が大きければ大きいほど、結婚や子育ての“コスパ”を考えてしまいがち。

 一応、2020年から『こども家庭庁』が設立され、政府は子育て支援や家族政策に本腰を入れるとしています。これにより、子育てと仕事の両立が“無理ゲー”である状況が改善され、金銭的・労力的な面での子育て負担が減れば、若者が思い描く将来の形も変わってくるかもしれません

「若者の恋愛離れ」の背景には…

 さらには、「子育て・家族政策がうまくいっている諸外国と見比べながら、いまの日本に必要なものを列挙します」と続ける。

「まず、公的な住宅保障に力を入れる必要があります。新たに同居生活を始める人や、子供が生まれて家族が増えた人が安価に適切な住宅を手に入れられるような住宅政策が必要です。次に、乳幼児や病児を含む様々な子どもたちを預かる場とサービスの拡充です。

 いつでも簡単に安心して子どもを預けられるような使いやすいベビーシッター制度や、病児も預かれる看護師等の専門家のいる保育所などが必要です。最後に、学校給食の無償化や教育の無償化、児童手当の拡充など子育て費用を社会が負担していく仕組みも喫緊の課題です。

 最終的に、結婚や子育てをするか否かについては個人の意志が尊重されるべきです。そして、どちらを選択しても、誰にも非難されず、社会的に不利な状態にも陥ることがないような社会こそが“望ましい社会”だと私は考えています

 子育てにかかるコストの削減だけでなく、子育てしやすい環境整備など、やることは山積みではある。「若者の恋愛離れ」の背景には、一朝一夕では解決できない社会的な要因が複雑に絡み合っているようだ。

<取材・文/望月悠木 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

【高橋幸】
武蔵大学社会学部非常勤講師。専攻は社会学、専門は社会学理論、ジェンダー理論。主な論文に「ポストフェミニスト的言説パターンの登場とその特徴」「女性の外見的魅力をめぐるフェミニズムのポリティクス」など。著書に『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど:ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(晃洋書房)

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている
Twitter:@mochizukiyuuki

フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど

フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど

「もうフェミニズムに頼らなくても、女性だって活躍できる」 「女性差別がなくなった現代において、フェミニズムの時代はもう終わった」と彼女は言った。では、私やあなたの心のどこかに張りついている「女であることの不安」はいったいどこからくるのだろうか。――「女らしさからの自由」と「女らしさへの自由」、どちらも実現できる世界をともに目指すために

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