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銃撃の責任は「アベ批判派の悪口」に?権力者へのスタンスを考える

ビジネス

「民主主義への挑戦」に対するリアクション

 この7月8日、僕たちはもともと大阪選挙区における街宣の取材で、隣の京都にも行くつもりでした。しかし、この件を受けてほとんどの政党が街宣活動を一旦中止するという判断をします。この時点では、たしかに犯人の動機や規模がわかっていないため、街頭に立って話すことのリスクは非常に高くなっていたと思います。

 安倍さんに対する警護体制に関してもその後、さまざまな議論が起きています。そういったものを見直す時間も必要だったと思うし、街宣活動の中止という判断は理解できます。ただし、選挙期間が残り2日しかない中で、果たして街宣活動をどこで、いつ再開できるのか、そして再開したときにどんなことを言うのか。これがすごく大事になってくるなと思いました。

 そんな中で、大阪選挙区では日本共産党の辰巳孝太郎候補が街宣活動するという発表があったので、さっそく聞きに行きました。当然、演説の冒頭で銃撃事件について強い言葉で抗議するわけですが、この時点で、「民主主義への挑戦」だとか、「暴力による言論封殺」に対するアクションとして、言論をもって有権者に言葉を届けることは、とても大事なことだと思いました。

 あのタイミングでその役割が誰にできるかといったら、選挙活動中の各候補であろうと僕は思いました。辰巳孝太郎さんはそういうスタンスで街宣をしていたと思います。

立憲民主党・辻元清美氏の街宣へ

辻元清美

辻元清美氏の事件後の街宣のようす※辻元清美氏のTwitterより

 立憲民主党の辻元清美候補は7月8日、街宣活動を中止するという発表をしたあとに、それを訂正し、継続することを宣言しました。辻元さんは暴力やデマによって言論が萎縮することに、ずっと抵抗してきました。これは辻元さんの今回の選挙戦のテーマのひとつでもありました。

 2022年3月には白い防護服を着た男に自身の事務所に不法侵入される事件、7月には事務所のベランダに卵を投げつけられる事件を経験しています。後者においては「自作自演」という言葉がTwitterのトレンド入りもしています。こうした言論空間がすでに醸成されている点も注意が必要です。

 この時点では犯人の動機はわかっていなかったため「今回の事件が暴力での言論封殺という構図であるならば、それに対して言論で対抗すべきである」というスタンスを表明して街宣をおこなっていました。

 僕とプチ鹿島さんは8日の街宣を見に行ったんですが、マスコミの囲み取材を受けている最中に、安倍さんの訃報が辻元さんの耳に入ります。午後5時少し過ぎだったと思います。僕は横で見ていたわけですが、そのときに辻元さんは、文字通り言葉を失います

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