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おいしい焼肉店を選ぶ重要ポイント。ホルモンなら「ガスより炭火」

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炭火×網、ガス×スリット入り鉄板。結局どっち?

焼肉

 スタンダードなガスロースターは手前と奥の2列に走るガスの直上は全面的に強火で、センターが中火、両サイドが弱火になっている。しかも、スリットが入っているセンター部分をうまく使えば加熱ムラをつけられる。これほどの火力のメリハリはカンテキには求められない。

 ちなみに七輪は、本体下部の通気口を開ければ全体の火力が強くなり、閉じれば火力を抑えることができるので、合わせ技として覚えておきたい(ただし、通気口は熱いうえに油汚れなどでたてつけが悪いことも多いので、開閉はくれぐれも慎重に)。

「炭火×網」の利点もあれば、「ガス×スリット入り鉄板」の強みもある。それぞれにしか出せない肉の味がある。言うまでもないが、演出するのは炭でもガスでもない。焼き手自身だ。

「ガス×網」の関西スタイルで問われる肉焼きの腕

 ガス×網のロースターは、さらにメリハリの効いた焼きになる。2列あるガス火の直上が強火でセンターはごく弱火ゾーン。ガス火とセンターの際のごく狭い部分が中火ゾーン。ここの間で繊細なトング使いが要求される。焦げにもつながりかねない強火ゾーン、焼き目のつきやすい中火ゾーン、保温に向いたごく弱火ゾーンという3エリアを行き来させながら、ホルモンや肉を焼き上げるのだ

 この焼き台は特に中火ゾーンの設定が非常に繊細で、それこそ吸気・排気や店の換気状況、場合によっては入り口の扉の開け閉めで空気の動線すら変わったりもする。そのクセ、皿から網の上にジャーっと流し込むような焼き方にも対応できる。

 ガス×スリット入り鉄板も、炭火×網も網の上に流し込んで焼くこと自体はできる。しかし、いったん仕上がった後の肉は、焦げ&乾燥一直線。まとめて焼いて焼き上げた後、焼き台の上で保温しながら肉をつつく。そんな焼き方が成立するのは、ガス×網の組み合わせのみ、というくらいに考えておいたほうがいい

 ガス×網のロースターは、ガス×スリット入り鉄板とも炭火×網とも異なる熱源だが、さまざまな熱源を体験することで焼き手のスキルは間違いなく上達していく。

<TEXT/ライター・フードアクティビスト 松浦達也>

調理の仕組みや科学、食文化史などを踏まえ、料理誌・一般誌・新聞・書籍・ウェブメディアまで幅広く執筆・編集を手がける。テレビ・ラジオなどで食トレンドやニュース解説、番組監修や企画も。エビデンスにもとづいた考察に定評があり、肉焼き関連のコンテンツも多い。著書多数。
●Twitter:@babakikaku_m
●Instagram:@babakikaku_m

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