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形式的な入社式、コロナ禍入社の苦悩…ドラマ『悪女』が描く“令和の会社員”が超リアル

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よりどりみどりの「イケメン3人衆」

 というわけで、女性社員の多彩なキャラクター性が圧倒的な魅力を放つ本作だけれど、戦う女性よりは慎ましくというか、適度なさじ加減で合いの手を入れるようにして盛り上げてくれる男性社員たちも、なかなかよりどりみどりなキャストを揃えてきている。

 田中が、清掃スタッフの顔とルーティンを覚えるために、ひとりひとり挨拶回りする場面。「出てきたぞ、第1イケメン!」と思わず叫びたくなるのは、ガラス扉の取手を拭き掃除する山瀬役の高橋文哉だ。こういうさりげない役どころが、ほんとうにチャーミングな最旬の若手イケメン。特別応接室で掃除機をかけるときなんか、窓から差し込む日差しが、彼のはにかむ表情を美しく縁取る神々しさだった。

 忘れちゃいけない、入社式で一番小言の多かった企画開発部の小野忠(鈴木伸之)、登場の順番的には彼こそ、第1イケメンに他ならなかった。八頭身はあるだろう、長身でスタイル抜群、端正な顔立ちの鈴木伸之が、スーツを着たら、それで十分。でも、本作では2番手という役どころが、非常に見もの(たぶん、だんだん田中のことを好きになることが予想される)。

 さて、じゃあ1番手は誰か。田中がつい一目惚れしちゃうのが、どうやら向井理。冒頭で彼女が男性社員の顔を覗き込みながら面影を探していた、お目当ての人だったらしい。TBS火曜ドラマで2021年に放送された『着飾る恋には理由があって』(高橋文哉の新入社員役の鮮やかさが素晴らしかった!)でのカリスマ社長が記憶に新しい向井が、どこか謎めいた魅力を隠し持ちながら、小粋な雰囲気で、田中とこの先どんなやり取り、あるいは蜜月関係(?)になるのか!?

 向井を筆頭に、鈴木、高橋が寄り合う「イケメン3人衆」もどうやら女性キャラには負けていないようだ。

多様な視点と楽しみ方

 と、まぁ、イケメンをこよなく愛する筆者の想いはこれくらいで留めておくにしても、だ。案外、こういうイケメン・ウォッチャーの視点が、本作には有効である気がする。と言うのも、田中の想い人である向井演じるT・Oさん(同じ会社だが、部署も名前も分からず、イニシャルだけしか分からないという設定)が、かなりのキーパーソンで、彼女がこのイケメン社員への気持ちを加速させることで、物語は前に動き出しそうな予感があるからだ

 実際、峰岸から「出世したくない?」と聞かれ、即答する田中が、思い浮かべる薔薇色のオフィス・ライフ。それは、憧れのT・Oさんの名前を突き止め、同じ部署で働けたら程度のたらればな願い。それを叶えるためには、「悪(わる)になる」必要があるともアドバイスされ、素直に受け止め、異動命令が出る。異動先は、人事部。早くもT・Oさんと再会するだけでなく、平成版の石田ひかりが上司役でいたり、これはかなり急ピッチ展開の本作。

 令和版女子の力強い動向を見守るもよし、イケメン3人衆を気楽にウォッチングするもよし。いずれにしろ、多様な視点と楽しみ方を可能とする本作が、この春最注目のドラマであることは、まず間違いない。

<TEXT/加賀谷健>

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。
ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」や「映画board」他寄稿中。日本大学映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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