なぜ介護や保育は低賃金なのか?“必要不可欠”なのに冷遇される理由
安いニッポンでは待遇改善は無理
ただ、ここ最近は福祉業界や運送業界などで人手不足が顕著だ。人手不足であれば待遇改善が促されるが、なかなか好転しないのはなぜか。中澤氏は「待遇改善するためには、その原資が必要となります。しかし、人手不足の業界は先ほど説明したように収益が上がらない構造になっているのです」と説明する。
「保育料や運送費を上げれば、待遇は改善される可能性がありますが、日本は長期間のデフレに陥っています。国全体が“安いニッポン”になったため、保育料や運送費を上げると利用・消費してもらえません。人手不足かどうか以前に、今や人材にお金をかけられなくなっています」
“安定した仕事”イメージを広めるには
また、待遇の悪さだけではなく、どこかネガティブなイメージが根強い空気感も、人手不足の要因になっているのではないか。実際、中澤氏も「エッセンシャルワーカーは実際にスマートなイメージは持たれていないと思います。どちらかと言えば、エッセンシャルワーカー全般は“3Kの仕事”(キツい・汚い・給料が安い)というイメージを持たれています」と認める。
「特に離職率の高さがその要因としても大きいではないでしょうか。働き続けられること、つまりは持続可能であることは、現在どの分野でも重要な課題になっています。SDGsの中には“DECENT WORK AND ECONOMIC GROWTH(持続可能な経済成長および安全かつ生産的な雇用と働きがいのある雇用の促進)”というゴールがあります。つまり、適度な労働時間や生活できる賃金、高すぎない離職率など、DECENT(ちゃんとした)な仕事に変われば、自ずとイメージは変わるでしょう」
確かに“安定した仕事”というイメージが広まれば、周囲の人から尊敬のまなざしが向けられるだろう。
さらに、エッセンシャルワーカーをDECENTな仕事にするためには「やはり、当事者が声を上げなければ地位向上にはつながりません。声を上げることで待遇が改善に向かう、という成功体験がこれから出れば、変わってくると思います」と提案。待遇改善は自らの手で勝ち取る必要がありそうだ。