なぜ中年男性は教えたがるのか?ウザい“教え魔”にならない回避法
指摘してくれる友達がいない
自身が教え魔・クレーマーになっていること、さらには剥奪感の男性化を抱えていることに気付くことは容易ではないため、「他者と交流しながら自身が保有する男性性を指摘してもらい、折り合いをつけていくことが望ましいです」と第三者の指摘に期待する。
「中高年男性は優越志向が強く、他人に指摘されることを非常に嫌います。さらには、『男は弱みを見せるな!』と刷り込まれており、コミュニケーションで苦労していても友達に気軽に相談できません。そもそも、気軽に相談できないために他者と信頼関係を築くことができないため、男性は女性よりも友達が少ない傾向にあります。
また、女性はもちろん、最近の若い人は空気を読むことに長けており、高圧的な態度をとられても『うんうん』『そうなんですね』と穏便にすませようとする。その結果、男性側は自身の問題点に気付くどころか、『自分は良いことをしている』とさえ、錯覚しまう可能性もあります」
教え魔・クレーマーの暴走を止める術がないことが、本人たちにとっても一番の不幸なのかもしれない。
教え魔・クレーマーにならないためには
将来的に教え魔・クレーマーにならないためのアイデアとして、「ボランティアや趣味といった仕事や家庭以外に居場所を見つけることで、多様な人と交流することで配慮が学べ、教え魔・クレーマーを脱するためのヒントが得られるでしょう」と回答。
「とはいえ、剥奪感の男性化に苦しみ、社会的な活動に消極的な男性は多いため、本人たちに積極的な行動を促すことは安易な自己責任論につながりかねない。スウェーデンでは、不安感を抱える男性が相談できる“男性危機センター”を設置しており、政府には女性支援の施策はもとより、平行して男性支援的な政策を検討してほしいです。
“男性主導”とは言いますが、確かに男性が下駄を履かされ、甘やかされていることは事実です。しかし、男らしさの呪縛に苦しんでいる男性もおり、教え魔・クレーマーを“ただの有害な男性”と安易に消費せず、男女平等実現のための議論のキッカケになればと思います」
ジェンダーギャップ指数が示すように、女性差別は改善されるべきだ。それと同時に“男性性”の押し付けについても徐々に関心が向いてくれることに期待したい。
<取材・文/望月悠木>
【伊藤公雄】
京都大学文学部卒業、同大学院博士課程学修退学、イタリア政府給費留学生としてミラノ大学政治学部留学。2017年より京都大学名誉教授・大阪大学名誉教授。現在、日本学術会議会員、独立行政法人国立女性教育会館監事、日本イタリア会館常務理事、京都府・大阪府・滋賀県の男女共同参画審議会会長などをつとめる