bizSPA!

元プロ野球選手の大学教員が感じた球界の古い慣習「野球に集中しろと怒られました」

学び

もし自分が菅野の立場だったら

西谷尚徳さん

シーズンオフには毎年のように地元・仙台の小学校で授業を行っていた

 話は少し脱線するが、あなたが就職活動で複数の会社に内定をもらったら、大手か、将来性のある会社か、働きやすそうな社風の会社を選ぶことだろう。しかし、「最初に内定を出した会社に必ず入社しなければならない」という決まりがあり、それが第1志望でなかったら、どんな行動を取るだろうか?

 諦めて入社する人もいるかもしれないが、おそらく素直に納得はできないはずだ。自分の人生を考え、無視して好きな会社を選ぶ人がいてもおかしくない。西谷さんはこのケースと同様なのが、読売ジャイアンツ(巨人)の投手・菅野智之選手だと指摘する

「2011年のドラフトでは巨人と北海道日本ハムファイターズが1位指名し、抽選の結果、日ハムが交渉権を獲得しましたが、菅野選手は入団を拒否しました。浪人し、翌2012年のドラフトで巨人に入団し、一部の野球ファンからかなりのバッシングを受けました。でも、もし僕が菅野選手の立場だったら、同じ行動を取ると思います。1年待てば希望の球団に行けるんだったら、そうします。プロ野球だって就職先のひとつなのですから」

まだまだ球界は閉ざされた狭い世界

西谷尚徳さん

楽天時代

 西谷さんの考えに賛同できない球界関係者や野球ファンはいるだろう。西谷さんも「何の保証もないプロ契約でも、契約である以上は違反していると捉えられたら、何も言えません」とプロ契約がどんなものかは重々理解している。

 しかし、「そうだとしても、選手にも自由はあるはず。自由が許されないのであれば、日本特有のプロ野球のシステムを作り直すべきだ」と語気を強める。

 現役時代は異端視された西谷さんだが、ここ数年はNPB(日本野球機構)や日ハムからセカンドキャリアの相談員や講演を依頼されるなど、球界を取り巻く空気が少しずつ変わってきたと感じている

「最近はファンの皆さんも選手のセカンドキャリアに好意的な関心を持ってくれるようになりました。日ハムで講演した時は清宮幸太郎選手をはじめ、積極的に質問してくれましたし、現役中に士業の資格を取ろうと頑張っている選手もいました。僕が理解されなかった時代とは変わってきました。一方で、一般社会の最低賃金すら把握していない選手もいる。まだまだ球界は閉ざされた狭い世界なんですよ

おすすめ記事