アジア系差別が増えた原因はトランプ政治にある。「日本人は大丈夫」ではない
「日本は大丈夫」という感覚は通用しない
「日本とアメリカは日米同盟で固く結ばれているから」みたいなデカい話で、「日本人だって言えば大丈夫なんじゃないか」とか言いますが、僕の経験から言っても、アジア系は欧米人から見て、中国人なのか韓国人なのか、まったく見分けがつきません。
これは、例えば僕たち日本人が、ヨーロッパの人たちがどこの国から来たのかが正確にわからない感覚と同じだと思います。だから、何度も言いますが、本当に見分けが付かないんです。
さらには、「自分は日本から来た」と言ったところで「それがどうした」って話です。その言説そのものが属性に基づく差別につながる可能性がある上に「違いがわからないから関係ない」ってことになる。「日本人は大丈夫だよね」っていう言説はまったく通用しないんです。だから、いまアジア系のアメリカ人が向き合っている状況は、僕らも含めたアジア系の話だという感覚を日本人が持っていないことも、非常に問題だと僕は思います。
僕がロンドンにいたときもそうですけど、箸を使ったり、白米を食べること自体、1980年代ではとても珍しがられました。今は文化として浸透はしていますが、あくまで“アジアのスタイル”という知識が広まっただけです。アメリカ、欧米圏の白人が、アジア系も「自分たちと同じ文化の人たちである」という考え方をまったくしていないということは変わってないと思います。特に、この状況下でのトランプ前大統領をはじめとした言説は、差別にOKサインを出してしまった。
「アジア系女性」に対するステレオタイプも
2021年3月に起きた、アトランタでの銃撃事件とマンハッタンの路上でおきた暴行事件も、女性が標的になっているんですが、アジア系の女性に対するステレオタイプもアメリカでは存在しています。従順でおとなしく、小柄、そして逆らわない。それがある種の性的な対象としてのレッテル貼りをされやすいです。アジア系の女性に対しての偏見というものが、さらに輪をかけて、状況を悪化させていると言われています。
今、アジア系アメリカ人が連帯をして、この状況を改善していこうという動きが起きています。これは、どこから来た何人というよりは、アジア系アメリカ人としてコミュニティを作っていこうという動きです。「#StopAsianHate(ストップエイジアンヘイト)」「#StopAsianCrimes(ストップアジアン・クライムス)」というハッシュタグを使ったTwitter上のプロテストも起きています。
ヒップホップでいうと、グラフィティー・アーティストのエリック・ヘイズとFUTURA(フューチュラ)とかが「Stop Asian Hate(ストップエイジアンヘイト)」というロゴが入ったTシャツを作って、収益をアジア系のコミュニティに寄付するという動きをしています。有名な俳優だったり、ミュージシャン、グラミー賞にノミネートされた韓国の音楽グループBTS (防弾少年団)もメッセージを出しています。そういった意味では、連携がなされていると言えます。