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明星食品、高級袋麺ブームの火付け役「中華三昧」を生んだ1本のCM

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1本のCMが大ヒットを呼ぶきっかけに

 あえて首都圏の百貨店限定で中華飯店を販売したことや、当時の即席麺の常識を覆す品質、パッケージが大きな話題を呼び、手応えをつかんだ明星食品。そして、1981年10月に中華三昧の発売にこぎつける。中国料理を代表する広東、北京、四川。本場のエッセンスを盛り込み、「本格中華の拉麺」の商品として打ち出した

「中華飯店が好評を博したことで、『お客様は高い値段でも本格志向の味を求めて購入する』ことがわかった。そこで“真打ち登場”という形で中華三昧を世に出したんです。CMに結構な予算を投下し、中華三昧の魅力が伝わるような訴求を心がけました。

 本格高級中華らしさを印象付けるため、当時の新進気鋭のクリエイター陣を起用したCMコピーや音楽も相まって、中華三昧は大ヒットとなり、テレビやニュースにも大きく取り上げられました。中華三昧が『ノンフライ袋麺市場を牽引する』ために、会社の看板商品として成長させていこうという契機になりましたね」

 中華三昧の大ヒットがきっかけで、即席麺市場は空前の高級麺ブームが巻き起こり、“高級袋麺ブームの火付け役”は、現在まで続くロングセラー商品となったわけである。

“ジリ貧”状態が続いてしまった時期も

明星食品

 しかし、1990年代後半から競争激しい即席麺市場の波にさらされ、“ジリ貧”状態を経験することになる。

「中華三昧は今年でブランド誕生40周年ですが、これまでこれといった失敗作はないんですよ。いわば“ど安定”な商品で『即席麺は食べないけど、中華三昧は食べる』というお客様も結構多い。しかし、1990年代後半からはどんどん発売される即席麺の勢いに押されてしまい、存在感を見せられずにいました

 特に、2010年から始まった『マルちゃん正麺』や『日清ラ王』に代表される“生めん食感を謡ったノンフライ麺ブーム”が売上にも大きく響いた。ブームの最中、会社全体でも『中華三昧のブランドロイヤリティは高いのに頭ひとつ抜け出せない要因』を分析し、どのようにして付加価値を高め、価格に見合うだけの美味しさを伝えていけるか意識するようになった」

 試行錯誤していく過程で、行き着いたのは高級中華料理店とのコラボだった。

「日本を代表する中華の名店の料理長が持つ“匠の技”と、麺屋としての“意地”を組み合わせることで、中華三昧の王道の味をさらに進化させることに活路を見出しました。2019年からは完全にコラボ商品に振り切って展開しています」

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