リクルート社員が被災者とはじめた挑戦。3万人が愛用する「新しい市民証」とは
友であり、後任であり、同級生でもある
そして、そんな小松さんは、今でも私にとってなくてはならない存在になっている。自分が気仙沼を去ることを決め、後任問題にぶち当たったときも彼はすかさず手を挙げてくれた。彼は当時の会社を辞め、地元に残る決断をした。
今、小松さんは出向者ではなく、気仙沼のまちづくり法人に籍を置いている。それは民間企業ではなく、上述した地域の資源を磨きながら関係人口を向上させていくことを主眼とした官民をかけあわせた組織として、国にも登録されている法人になる(観光庁DMO法人に2016年に登録)。
私もこの法人の理事を兼務しているが、地域資源を活用した街全体での商品づくりというチャレンジは非常に壮大で、その陣頭指揮を執っているのが小松さんということで引き続き本当にかけがえのないパートナーだと思っている。
地元に熱い思いを持ち、都会とローカルの生活の両方を知り、うまく両者の気持ちを理解してくれて地元の街づくりにコミットしてくれる人間は地域にとって大変貴重な存在だと思う。これからのあらゆる地域をもり立てるためにも非常に重要な人材だ。
10年目の気仙沼への想い
震災からちょうど10年。そして私自身が仮設住宅で暮らしながら復興支援をしていたあの時からもう7年が経過し、言葉にしにくい独特な感情になっている。しかし、ひとつ言えることは、気仙沼はあの危機に直面したことで、今、私を含めたくさんの仲間ができたということだ。
震災の被害はもちろん大変だが、今は人口減少・過疎化というさらに深刻な問題にも直面している。だからこそ冒頭の気仙沼クルーカードをはじめ、さまざまな取り組みで市外に仲間となってくれる関係人口をつくり、その方々と困難を乗り越えていくことが必要だと思う。
そういう意味では、気仙沼市は日本有数の仲間とともに困難を克服していく力がある地域だと思う。そして私も距離は離れてはいても、その一人の仲間として引き続き寄り添わせてほしいと思っている。今後のさらなる復興を願っております。
<TEXT/森 成人>