コロナで売上9割減の「よーじや」 あぶらとり紙だけじゃない“次の一手”
新たな挑戦、化粧品やカフェ事業へ
また、売上の半分を占めるあぶらとり紙に頼るのではなく、第2、第3の事業の柱を作るため、化粧品やカフェといった事業の多角化を行ったという。
「よーじやでは『化けるためのものではなく、美しくよそおうためのもの』という思いから、“化粧品”ではなく“美粧品”と称しています。あぶらとり紙はあくまでメイクの一部であり、ほかにもポーチの中身にふさわしいアイテムを見出せないかと新展開を考えたんですね。そこから、基礎化粧品『うるおいぷらす』や、伝統的な化粧小物、口紅などの『よーじや 粧具』を発売しました。ものづくりにかける情熱や京都の化粧文化を未来に伝えたい。そんな願いを込めての新しい挑戦でした」
さらには、京都を訪れる観光客やインバウンド向けに「京都で培ったおもてなし」の提供、そして「京みやげ」によーじやの商品を選んでもらうために、カフェや空港免税店の出店を敢行した。
「京都は観光シーズンになると大勢の観光客が訪れます。当時京都にはよーじやのブランドショップが2店舗しかなかったので、ハイシーズンは混雑必至でした。そこでお店が混んでいる時間に、お客様がゆったりと寛げる場所を作りたいと思ったことが、カフェを始めた経緯になりますね。また、空港免税店は外国人のお客様にも商品を手に取ってもらうために出店し、現在では羽田空港と成田空港に構えています」
コロナ売上9割減…どう乗り越えるのか?
事業の幅を広げるためにさまざまな挑戦をしてきたよーじやだが、2020年には新型コロナウイルスの流行により、成長の鈍化を余儀なくされた。インバウンド消費の蒸発。緊急事態宣言発令による全店舗休業。まさに創業以来の困難極まる状況下に直面している。
「コロナ禍により、昨年に比べて売上は90%減と厳しい状況に直面しています。苦難を乗り越えるために、自社のオンラインショップでの販売や京都府が運営する越境ECサイトへの出品などに取り組むほか、2020年10月から三越銀座にある免税店『Japan Duty Free GINZA』内に10坪の期間限定ショップを出しています。
初めは会期3か月の予定でしたが、お客様からの好評を多くいただくことができ、2021年の3月末まで会期を延長することになりました。今まで短いスパンでの催事販売は経験ありましたが、今回のような長期のポップアップショップは初めてで、辛い時期の中でも一筋の光明を見出せるのではと思っています」
社長交代を機に、京都老舗ブランドの意地を貫く
2020年4月には5代目の國枝昂氏に社長が引き継いだ。まだ31歳と若く、よーじやの未来を担う新しい経営者の誕生に周囲は期待を寄せる。今後の展望について入江氏は「伝統を大切にしながらも、商品の魅力をより多くのお客様に届けられるよう努めたい」とし、意気込みを語った。
「社長が変わったことで、今は転換期だと捉えています。観光業の使命としては、少しでも早く感染拡大を抑えること。観光シーズン到来に向けた準備期間として英気を養いたい。また、新社長の『発想力』や『行動力』をもとに伝統を大切にしながら新たな取り組みも模索したいと思っています。
ここ2年くらいをかけて『新しいよーじや』を創る体制はできてきたので、アフターコロナに向けた『Made in Kyoto』のブランド力の強化を図るべく尽力していきたい」
時代を越えても人々を魅了する京都の伝統。その誇りにかけて、よーじやは困難に立ち向かうことだろう。今後の発展に期待したい。
<取材・文/古田島大介>