美川憲一、“飾らない言葉”のブログが話題に「シンプルに生きるとラクになる」
9月からスタートした歌手・美川憲一さん(74)のブログが若い世代に反響を呼んでいます。
〈出来ることをコツコツとやるしかないわね〉〈時間はあるようでないんだから みなさんも幸せな事で 時間を埋めていくのよ~〉など、まるで美川さんに語りかけられているようなその文体は、〈美川さんの声で脳内再生できる〉と話題になっているほか、人生の機微が詰まった言葉には「沁みる」「泣いてしまった」という声も多数。
読むと元気が出る、と人気のブログタイトルは「しぶとく生きる」。全く売れなかったデビュー曲からのヒット、そしてスランプを経験し、再ブレイク。そして“おネエキャラ”はいつから――? など、「しぶとく生きる」というメッセージにつながる半生を聞きました。
→インタビュー後編<コロナ禍で、美川憲一が若者に伝えたいエール「あなた一人じゃないのよ」>はこちら。
シンプルに生きると「ラク」になる
──アメーバブログ「しぶとく生きる」を始めたきっかけを教えてください。
美川憲一(以下、美川):今の時代に少し合わせていかなきゃいけないんじゃないかって、周りのスタッフに言われてね。
私はどっちかというと、マメなほうじゃないんですよ。「やりたいことはやるけど、やりたくないことはやらないわ」っていうスタンスでずっと今まできたのでね。でも、みんながやってるから、っていうぐらいの気持ちで、去年インスタを始めて。「ブログは(やらなくて)いいんじゃないの?」って最初は言っていたんだけど。
──ブログの飾らない言葉が、若者の心に響いています。
美川:私はね、スランプに陥ったとき「ここまで落ちたら這い上がるっきゃない」というところまで落ちてやろうと思って、落ちたんですよ。1984~1985年ごろのことね。
私は自分が今どのくらいの位置にいるのか、肌で感じる人間なんです。でも、自分が落ちて「苦しい」と思うんじゃなくて、この寂しさをしっかりと受け止めようと思ったの。そしてその時に、これからは構えないで、シンプルに生きようと。見栄も張らないでね。
そう考えたらすごくラクになるんですよ、気持ちが。外を歩くのも、人に声をかけられたら挨拶できる範囲で挨拶をして、話しかけられたら話したりしようって。すっごいラクなの、そうしたら。
産みの母と育ての母
──“自分がいまどのくらいの位置にいるのか”がわかるのは、子供の頃からですか?
美川:子供の時からそうでしたよ。私は産みの母と育ての母(実母の姉)という2人の母がいて。美人姉妹だったんです。育ての母のほうが色っぽいのね、着物を着て品があって。実母のほうは割とあっけらかんとしていて、洋風でモダンな感じで。
ある時、姉夫婦と実母が汽車に乗っている時、車内で姉が男性から声をかけられて。(姉が)ごめんあそばせ、私は主人がおりますのよって言ったら、なんかがっかりした顔して。それでも(家に)遊びにきたんですって。実母は独り身でしたから、(姉が)その男性をすすめたら、タイプじゃないわって言ったんだけど、姉に「結婚して面倒を見てもらったほうがいいんじゃない?」と勧められて。お付き合いして、その男性がアパートを借りてくれて。
それで、母が身籠って私ができたんです。母は子供できて嬉しいわって思ったけど、(実の父は)喜ばなかったんだって。産むのは「いいよ」って言ったんだけど、2か月ぐらい経ったころに薬を持ってきたのよ。「これを飲むと元気な赤ちゃんが生まれるよ」って言って。
でも、母はなんかイヤな予感がしたらしいの。今ここで飲んでって父に言われたけど、後で飲むから心配しないでよって言って(父を)帰して。父は1回も泊まらなかったんですって、家には。それで2~3日経ってから(父が)来た時に、「飲んだ?」って聞くから、母は飲んだわよって言ったけど、実はその前に流しで薬を捨てていて……。