モラハラ父親の会社に就職した20代職人の「学歴コンプレックス」
「親の会社に入る」というと、就活をしなくて済むことから羨望の目で見られがちだ。しかし、父親の建築会社に入って「墨出し」の仕事を始めた山口祐樹さん(仮名・24歳)を待っていたのは、指導なし・モラハラ・低賃金と何をとっても「地獄」としか思えない環境だった。
前回のインタビューでは、主に墨出しのリアルや自殺未遂の経験を語ってもらったが、後編では専門学校に入学して映像制作の職を目指し、挫折するまでの過程を詳しく聞いていく。
学歴コンプレックスから専門学校に
3度の自殺未遂を経験し、死ぬことを諦めたという山口さん。しかし、恋人と別れ、仕事にも絶望していた彼を待っていたのは、ただ仕事に行って帰ってくるだけの生活だったという。
「大好きな飲み会をしていても、何か満たされないものを感じていました。仲間たちが好きな会社に就職したり、家庭を持ったりしているのを見て、オレはこのままでいいのかな……と。そんな時、もともと学歴コンプレックスを抱えていたこともあって、なにかを学んで、視野を広げてみようと思ったんです。
貯金はいくらかあったので、まずは夜間制の大学に通おうと考えました。ただ、兄も同じく夜間に通っていたので、一緒は嫌だなと。そこで、自分は専門学校に入ってみることにしました」
専門学校に入るからには、なにかの分野を専攻しなければならない。山口さんはパソコンに触れることが好きだったので、ITスキルを学びたいと思った。
専門学校で楽しみを見つけた
結局、専門学校ではCGグラフィックの勉強をしたという山口さん。専攻を決めた理由は「ぶっちゃけ入学資料のパンフレットで一番女の子が多そうに見えたからです(笑)」という軽い気持ちだったが、専門学校後、学習には意欲的に取り組んだという。
「たいした思い入れはありませんでしたが、学費は1年間で約40万円。もちろんすべて自腹で支払いました。やるからには真剣にやろうと思い、古くなっていたPCを新調して真剣に勉強を始めました。
学校は月・水・金曜の週3日授業で、社会人学生も多いため19~21時の開講。私はその前に墨出しの仕事をし、学校のある新宿まで1時間程度かけて通学していました。それでも、毎回30分早い18時半には教室に入り、授業前に自学自習しましたね」
中学生の頃は札付きの不良だったという山口さん。勉強を真面目にやったことは全くなかったそうだが、真剣に学ぶうちにCGグラフィックの楽しさに気づくことになる。