渋谷パルコが目指す「次世代の商業施設」のあり方。その立役者が語る
商業施設の優劣は食で決まる
ファッションと並んで特に注力しているのがフードだ。「レストランコンテンツが、商業施設の勝ち負けを左右する重要なもの」と前置きした上で、レストラン街を戦略的に作っていると泉水氏。
「戦略的に作ったレストラン街『CHAOS KITCHEN(カオスキッチン)』は、混沌と喧騒の街である渋谷をイメージし、個性的な飲食店や意外性のあるお店など、従来のフードコートにはない食空間を創りました」
B級グルメから話題の食、一流のレストランまでが揃う食空間は、まさに玉石混淆という言葉がぴったりだろう。
現在の商業施設のレストラン街は横丁やフードホールが主流だが、その次を作りたかったという泉水氏。そのため、ニュー新橋ビルや新宿ゴールデン街、中野ブロードウェイなど自然発生的にできた商店街からアイディアの着想を得たのだという。
「渋谷は音楽カルチャーが根付いていることから、パルコ運営のライブハウス『QUATTRO』が手がけるカフェバーも出店し、音楽好きが集えるように工夫しています。飲食のみならず、レコードやアートグッズといった物販も行っているレストラン街は、他に類を見ないものだと思います」
「コト」を起こして「モノ」を売る
講演会後の質疑応答では、今後の展望や渋谷パルコへ足を運んでもらうための動線作りが話題となった。
「ファッションをメインにフードにも注力し、開業からここまでは順調な滑り出しで売上予算を達成できた。また、館内には12、13か所あるポップアップショップ、アーティストやクリエイターが展示発表するギャラリーも9つ備えており、『常に変化を感じる』商業施設としていつ来てもワクワクできるような場作りを行い、お客様に足を運んでもらえるよう努めていきたい」
そう手応えを感じつつも、抱える課題については次のように述べた。
「課題は、新しい売り方を作っていかなくてはならないこと。『コトを起こしてモノを売る』と言われるように、イベントを仕込んで情報発信をしていき、渋谷パルコに来訪する流れを今後はもっと力を入れていきたい」
イベントの企画チームは、これまで1つだったチームを2つに増やすなど、渋谷パルコで行うイベントを増やし、来店喚起を促す施策を行う予定とのこと。
ここ最近、渋谷駅周辺には渋谷ストリームや渋谷スクランブルスクエア、渋谷フクラスなど相次いで商業施設がオープンした。目まぐるしく変わる渋谷の街に、かつてそのカルチャーを牽引してきた渋谷パルコが、どう呼応し新しいムーブメントを起こしていけるのか。今後の動向に注目したい。
<取材・文・撮影/古田島大介>