東武-日比谷線直通の<THライナー>。停車駅、運行ダイヤ、料金、課題は…
2019年12月19日(木曜日)、東武鉄道(以下、東武)と東京メトロは、2020年6月6日に伊勢崎線と日比谷線を結ぶ座席指定制列車〈THライナー〉の運転開始を発表した。あらゆる面を占ってみよう。
目次
中目黒を始発、終着にしない理由を推察
〈THライナー〉は2019年12月に落成した東武70090型が使用される。座席はロングシート、回転式クロスシートの両方に設定可能なマルチシートを採用しており、効率的な運用ができる。ただし、実車を見た限り、トイレや洗面所がなく、乗車前に済ませる必要がある。
運転区間は上下列車で異なり、下りは霞ケ関―久喜間53.9キロ、上りは久喜―恵比寿間59.9キロである。東京メトロ―他社線間を結ぶ小田急電鉄の特急ロマンスカー、西武鉄道の〈S-TRAIN〉と同様に、境界駅(〈THライナー〉は北千住)を通過扱いにしていること、中目黒を始発、終着にしていないのが特徴だ(注、〈S-TRAIN〉の土休列車は、東急電鉄東横線と東京メトロ副都心線の境界駅、渋谷に停車する)。
下りの場合、霞ケ関に引上線があり、中目黒よりも使い勝手が良く、増発に対応できるものと推察する。一方、上りは仮に中目黒で一般列車として折り返す際、恵比寿―中目黒間を回送にすることで、走行中に座席をロングシートにセットするものと考えられる。そうでないと、折り返し時間内に乗務員の移動が手際よくできないのではないだろうか。
〈THライナー〉の下りダイヤをシミュレーション
平日の下りダイヤは霞ケ関18時台から22時台まで毎時1本運転される。『東武時刻表』2019年3月16日号(東武刊)を調べてみると、北千住発、夜の東武特急で、毎時03分発は23時台を除きない。日比谷線霞ケ関―北千住間の所要時間は約30分なので、霞ケ関は22時台を除き、毎時30分頃に発車するものと考えられる。
平日〈THライナー1号〉久喜行きをシミュレーションすると、霞ケ関を18時30分頃、運転停車(客扱いをしない停車のこと)の北千住を19時03分頃に発車。草加で区間準急北春日部行きを追い抜くことで、新越谷で乗り換えられる。また、越谷で急行南栗橋行きを追い抜くことで、せんげん台、春日部、東武動物公園のいずれかで乗り換えられる。さらに、せんげん台で各駅停車南栗橋行き、終点久喜で区間急行太田行きに接続する。
一方、土休の下りダイヤは表1を御覧いただければお分かりの通り、16~17時台が難解だ。
ダイヤ改正後、特急のダイヤが現行通りと仮定した場合、霞ケ関16時台は10分頃、17時台は30分頃に発車することが考えられる。
土休〈THライナー1号〉久喜行きをシミュレーションすると、霞ケ関を16時10分頃、運転停車の北千住を16時43分頃に発車。新越谷で各駅停車東武動物公園行き、せんげん台で各駅停車東武動物公園行き、せんげん台、春日部、東武動物公園のいずれかで急行南栗橋行き、久喜で各駅停車館林行きに乗り換えられる。
〈THライナー〉の新設により、新越谷、せんげん台、東武動物公園、久喜で各駅に停まる列車との接続を図り、伊勢崎線及び日光線の平日22~23時台に関しては、利便性重視のダイヤに見直されることが考えられる。
〈THライナー〉の上りダイヤをシミュレーション
上り平日は久喜6・8時台に設定され、ラッシュのピーク前とピーク後に運転される。
始発の久喜を何分頃に発車するのかは推測できなかったが、久喜で館林方面からの列車、東武動物公園で日光線南栗橋始発の列車、春日部で野田線からの列車、春日部、せんげん台、新越谷で各駅に停まる列車から乗り換えられるダイヤを組むだろう。
東武では、ほとんどの駅の券売機で特急券(一部列車を除く)を購入できるので、“買いやすい、乗りやすい環境”を整えている。おそらく、〈THライナー〉の座席指定券も駅の券売機で容易に購入できるだろう。
料金:東武ー東京メトロで計530円が理想
座席指定料金は東武と東京メトロを合算した金額になるものと考えられる。大人料金を占ってみると、東京メトロ線内は小田急電鉄の特急ロマンスカー、西武鉄道の〈S-TRAIN〉と同じ210円になるだろう。
一方、東武線内に関しては特急料金の最安値である320円を適用し、計530円にすることで割高感のないようにしてほしいと願う。
その根拠をあげると、車内設備が特急〈きりふり〉〈しもつけ〉用の350系より若干劣ること。有料列車、一般列車の双方に対応した簡易優等車両ゆえ、自販機やトイレを備えていないことが大きい。もし、リクライニングシートを採用していたら、浅草始発の特急〈スカイツリーライナー〉〈アーバンパークライナー〉下り列車の410円を適用し、計620円で納得がゆく人も多いと思う。
課題① ダイヤの乱れ
〈THライナー〉に関する課題が2つある。
1つ目は日比谷線の車両。2020年、20メートル車7両編成の車両に統一される予定である。首都圏の鉄道では比較的短い編成のため、ラッシュ時は18メートル車8両編成の時代から、混雑による遅れが慢性化している。
〈THライナー〉の新設により、伊勢崎線北千住―小菅間の複々線にポイントの新設が考えられ、ダイヤ乱れが急行線に波及する恐れがある。伊勢崎線は東京メトロ半蔵門線、東急電鉄田園都市線とも相互直通運転を行なっており、広範囲にわたりダイヤが乱れることを懸念する。
課題② 座席定員の少なさ
2つ目は簡易優等車両ゆえ、座席定員が少ないこと。特急〈りょうもう〉用の車両(200系、250系)は6両編成で、座席定員398人に対し、〈THライナー〉は7両編成で303人(予想)。4ドア車なので、座席定員が少ないのは致し方ないところ。平日は満席列車が続出し、座席指定券の入手困難も予想される。
70090型は4編成導入され、好評であれば将来の増備もあり得る。また、伊勢崎線曳舟―館林間は一部を除き、ホームの有効長が10両分確保されており、ゴールデンウィークなどの多客期には、中目黒―館林間の臨時電車設定も期待できよう(下りは春日部、上りは久喜でトイレ休憩の停車時間を確保してほしいところ)。
課題や期待が入り交じった〈THライナー〉のデビューを楽しみにしたい。
<取材・文・撮影/岸田法眼>