外資コンサルを蹴った東大卒社長が「書籍の朗読アプリ」にかける理由
海外の若者に勝てないと思った
――どの辺りの国に行かれていたんですか?
久保田:東ヨーロッパのブルガリアからポーランドへ北上して、ドイツまで行って日本に戻りました。そのあと卒業試験を終えて、今度はスペイン、モロッコ、ポルトガルをまわりました。
海外にいると、アニメや映画といった日本のコンテンツの話をされることがよくありました。みんな目をキラキラさせていて、「コンテンツって、生きていく上で必要不可欠というわけではないけれど、生きる希望になるんだな」と感じました。
あともうひとつ、東ヨーロッパで立ち寄ったルーマニアは、経済が停滞していたため、理系エリートの学生が「年収100万円でいいから仕事が欲しい」と言っていたんです。複数言語がしゃべれて、頭もよくて貪欲な彼らと自分を比べたときに、将来、ネットが発展して同じ土俵にあがることになったら、勝てない。
彼らと競争しないで済むようにするには、会社員としてのスキルではなく、経営者としてのスキル、さらには生存能力を高める必要があると思ったんです。
うまく行っていない会社だからこそ
――なぜオトバンクを手伝うことにしたんですか?
久保田:当時のオトバンクは全然うまくいっていなかったので、生存能力が高められると思ったんです。最初は、出版社の人と打ち合わせをすると「親御さんの立場に立って考えると、いたたまれない。会社にダマされているんじゃないのか」なんて言われて、非常にハードルの高いことをしているんだなとは思いましたね。
その頃のメンバーは3、4人ほどで、大学を出たばかりの若手と、あとは新人の声優やライターさんとかが集まっていました。