辞めたい会社のしつこい引き止めに、“ウソの転職報告”は有効か?
「次の職が決まった」ウソをついた結果
「すでに辞めたいと申し出てから1年近く経ってしまっていた」という栗島さんは、なんと言ったら辞めさせてもらえるか必死で考えたそうです。そこで思い至った結論は……「厚生労働省で働くことになった」というトンデモない嘘でした。
「僕の職場はシフト休みなため、平日の休日を使って。コツコツ転職活動をしたと伝えました。もともと教員免許も持っていたので公務的な仕事に興味があり、厚生労働省の非常勤になったと言ったんです」
確かに急に「厚生労働省に採用になった」というのは無理があるウソにも感じます。しかし、「非常勤」というところが妙な説得力を感じさせたのか、「それまで粘着的に引き止められていたのが、ぴたっとなくなった」と言います。
嘘の転職先を話したら引き止めが止んだ
「厚生労働省の中には東京の労働局も存在します。労働基準の監督を務める“労基”業務も厚生労働省が行っているため、無理に僕を引き止めて監査にでも入られたら面倒だと思ったのでしょう。
会社の規則では辞表受け取りから2か月後の正式退職、ということになっていましたが、民法では2週間前の申告でいいことになっています。そんな理由で、僕は社内でも異例の1か月の引き継ぎ期間で退職することができました」
国家公務員の、しかも労働を司る部署に関係する転職だということで、会社側も焦ったようですね。執拗な引き止めも労働局の監査に引っかかると、民事裁判になることなどもあるようなので、会社側もそれを恐れたのでしょう。
もちろん転職理由でウソを伝えるのは倫理的にNG。しかし、執拗な引き止め被害にあっている人は使ってみてもよいかもしれません。ちなみに、本当の転職活動では、試験日や初出勤日が決まっている場合が多いので、見抜かれないように注意が必要です。
― 特集・ブラック企業の辞め方 Vol.5 ―
<TEXT/ミクニシオリ イラスト/zzz(ズズズ)@zzz_illust>