おいしい焼肉店を選ぶ重要ポイント。ホルモンなら「ガスより炭火」
知られざる歴史、いい肉や店の見分け方と焼き方など、「焼肉」と一口に言っても、その奥は意外に深い。ガスロースターがいいか、炭火がいいか――。この最大の問いに答えを出すのもなかなか難しいはずだ。
今回は、ライター/フードアクティビストの松浦達也さんの著書『教養としての「焼肉」大全』より、「ガスロースターがいいか、炭火がいいか」について紹介する(以下、同書より抜粋)。
【第1回目の記事】⇒《焼肉をもっと美味しく食べるために、プロが教える「焼き方のコツ」》を読む
【第2回目の記事】⇒《焼肉で網を焦がさず、おいしく食べる焼き方。焦げをトングで削るのはNG》を読む
【第3回目の記事】⇒《ホルモンや赤身はタレか、塩か?失敗しない「焼肉の注文」をプロに聞く》を読む
ホルモン推しなら炭火の店を選べ
「ガスロースターがいいか、炭火がいいか」問題は、ほとんど永遠の課題とも言えるテーマだが、ホルモン(コプチャン、ホソなど)やシマチョウ(テッチャンなど)を焼くなら断然炭火がいい。
といっても、いわゆる遠赤外線効果が……という話ではない。ホルモンは皮目(腸壁)をじっくり炙って水分を抜ききるようにバリッと仕上げたいし、確かに炭火はホルモンの皮をパリッと仕上げるのに向いている。
だがそれは、遠赤外線効果や「ガスに比べて水分が含まれていないのでパリッと仕上がる」など、まことしやかに囁かれている利点によるものではない。実はこれらの俗説は、いまのところ学術的には証明されていない。もっといえば、焼き色や水分蒸発については、ガスとほぼ有意差が認められないとする論文も発表されている。
最大の違いは熱の当たり方
では何が違うのか。最大の違いは熱の当たり方だ。ホルモンは皮目を均等に炙って水分を抜きながら適度な焼き目をつけたい。そのために、網の上のどこが最適な温度かを見極め、焼いていく。炭火焼きは、七輪やカンテキの上全体が輻射熱で温まるので、ホルモンの皮目にまんべんなく熱が当たる。
強火、中火、弱火の温度差が無段階ということもあり、網上に最適な位置を見つけて肉を配置すれば、最小限の手数で焼き上げることもできる。
もしこれをスリット入り鉄板ロースターでやろうとすると、伝導熱が伝わるスリットの接地面以外には火が強く当たらず、クニュッとした食感の悪い部分ができてしまう。これは構造上仕方がないので、皮目全体から水分を抜くのは諦め、最後に強火にさらして意図的な焦げで風味を立たせる。