望遠鏡マニアが高じて「地動説」を発見した“科学者ガリレオ”のスゴさとヤバさ
人類の歴史を振り返ると、「本当は正しいことを言っているのにもかかわらず、時代の空気感や権力者の意向で、その意見が握りつぶされてしまう」という出来事は時々起こるもの。その代表的な事例といえば、「地球は太陽の周囲を回っている」という地動説です。この説を決定的なものとして証明した研究者の一人であるガリレオ・ガリレイも、自説を主張したがゆえに大変な目に遭っています。
そんなガリレオのスゴさとヤバさについて、『国立天文台教授がおどろいた ヤバい科学者図鑑』を上梓した、国立天文台水沢VLBI観測所所長の本間希樹先生に、解説してもらいました。
1000年近く信じられてきた「天動説」
「地球は太陽の周りを回っている」
現代では当たり前のこととして受け入れられているこの説ですが、中世や近世ではまだ「宇宙の中心は地球だ」という天動説が主流で、仮に「地球の周りを回っている」と言おうものならば命が脅かされる可能性もありました。
なぜなら、ギリシャの天文学者であるプトレマイオスが2世紀に「宇宙の中心は地球だ!」という天動説を完成させて以来、その後、1000年以上にわたって、ヨーロッパでは天動説は常識として信じられてきたからです。
「プトレマイオス説」が信じられた背景
「なぜまちがっていることが、ずっと信じられてきたの?」と現代人は不思議に思うかもしれませんが、その大きな理由のひとつは、中世ヨーロッパでキリスト教が持っていた絶大な権力です。
当時のキリスト教では「神はあらゆる能力を持つ絶対的な存在であり、この宇宙も、人間が住む地球を中心にして、神がつくったものだ」と考えられていました。この教えは「地球が宇宙の中心だ」というプトレマイオスの説とぴったりマッチしていたことから、宇宙のなり立ち=天動説だと受け入れられていたのです。
だから、仮に、「地球は太陽の周りを回っているのでは?」とでも言おうものなら、「この人はキリスト教の教えに反する異端者だ!」といわれて、裁判にかけられ、拷問を受けたり、火あぶりにされたりすることも。中世とは、天文学者にとっては非常にツラい暗黒の時代だったのです。