ウイルス感染や口臭につながる「口の乾燥」。冬の口腔ケアで防ごう
気温と湿度が下がり、空気が乾燥する冬は、口腔ケアをしっかりと行うことが大切です。特にコロナ禍でマスクをずっと付けている生活では、ますます口腔ケアが重要になります。マスクにもさまざまな弊害があり、気をつけたいトラブルがたくさんあるからです。
今回は、歯科医、口腔外科評論家の立場から、「冬に口腔ケアが大切な理由」をはじめ、乾燥や寒さ、マスクをずっとしていることによる口腔内や肌へのトラブルなど、冬に備えたい情報をまとめました。
理由1:ウイルス感染を防ぐ!
インフルエンザウイルスは、喉や呼吸器から体内に入り、感染します。空気が乾燥する冬は、水分が蒸発してウイルスが軽くなり、長い時間、空気中を漂うためにウイルスを吸い込んでしまう機会が増えるのです。
また、喉などの粘膜が乾燥すると、防御機能が下がり、ウイルスが侵入しやすくなるので、冬はインフルエンザや風邪にかかりやすくなります。予防にはマスクや手洗いが効きますが、実は口の中をキレイにすることもとても有効です。
歯科衛生士による口腔ケアを受けた人と、ご自身で歯ブラシだけのケアを行なった人とを比較した、インフルエンザ罹患率の研究があります。自分だけのケアでインフルエンザにかかった人は全体の10%だったのに対して、歯科衛生士による口腔ケアを受けてインフルエンザになった人は、ほんの1%しかいませんでした。
つまり専門の口腔ケアにより、インフルエンザにかかる割合が10分の1に下げられたというわけです。新型コロナウイルスが体内に侵入する入り口は、口の粘膜です。口の中が汚いと感染リスクが上がり、肺炎なども重症化・重篤化しやすくなります。冬場のウイルス感染予防として、口腔ケアがとても大切です。
理由2:歯周病とムシ歯を防ぐ!
冬場に空気が乾燥すると、口の中も乾燥しやすくなります。ツバが口の中で十分にまわらなくなると、細菌が増え、汚れが洗い流されなくなるため、ツバによる歯周病菌やムシ歯菌の抑制力もなくなり、歯周病やムシ歯になりやすくなります。
歯周病やムシ歯を防ぐために、ご自身で歯みがきを一生懸命に頑張っている方もいるでしょう。でも本当の予防にはなっていません。歯周病菌もムシ歯菌も、本当に悪い菌は歯にこびり付いてしまう上に、バイオフィルムという頑丈な膜に覆われて守られています。歯ブラシだけでは取れないのです。
この膜に覆われていると、厄介なことに、抗菌薬なども効かない状態です。また歯周病菌もムシ歯菌も、歯科医院でおこなう専門の口腔ケアでないと、剥ぎ取ることができません。
歯周病もムシ歯も、早期発見・早期治療がとても大切ですが、初期の段階では自分で見つけるとこができません。ですから、検診も兼ねて、冬こそ歯科医院を受診してください。