野村證券、新入社員をコールセンター配属。元社員が明かす“決定的な変化”
10月5日、野村證券は2021年度の新入社員約350名のほとんどを入社後1年間コールセンター配属にすることを発表。業界初、かつ足でかせぐ営業に定評のある野村証券の決定は大きな話題となりました。
一方で依然として先行きの見えないコロナ禍の中、いわゆるデスクワークを中心とした業務以外も含めオンラインに移行している企業は少なくありません。
そこで、野村證券勤務を経て現在はフリーの保険営業マン、YouTuberとして活躍する宋世羅さんに、今回の野村証券の決定について思うところ、そして今後、営業職に求められる能力はどのように変遷してくのか、話を聞きました。
野村證券の“持ち味”がなくなる恐れも
――早稲田大学を卒業し、新卒で野村証券に入社した宋さんですが、今回の件に関して率直にどう思っていますか?
宋世羅(以下、宋):野村證券は日本を代表するトップの証券会社です。外に出た一個人からは判断のつかない部分もあります。また、昨今のコロナ禍の中で社会的責任を果たさなければいけないという側面もあるでしょう。ただ、コールセンター配属になったことによって、これまで野村證券で培われてきた能力が育まれにくくなるのではないかと、元野村証券の人間として思う部分もあります。
――それはどういった能力なのでしょうか。
宋:簡単に言えば、ゼロを1にする能力です。極端な話ではありますが、私は今急に仕事がなくなっても街にでて1人の顧客を見つけられる自信があります。それは野村出身だからこそ鍛えられたものだと思っているのです。
マニュアルなどない野村證券の教育
――そもそも宋さんが務めていた時、野村證券ではどのような新人教育があったのでしょうか?
宋:いわゆる「マニュアルを渡されて、その通りにやれ」というものではありませんでした。教育担当の先輩社員はいるのですが、特に決まったことは教えてもらえるわけではない。現場に行って契約を取って来いと。もちろん、後からフォローをしてもらえるのですが「とにかく現場に出て自分の足を使って学べ」という環境でした。
1日に200件近く電話をかける、地元の社長さんを出待ちするなど、無駄なことは多かったと思いますし、バカなこともしたかもしれません。ただ、自分で試行錯誤をして、必死になってやる環境があったからこそ、全く何もないところから、1件のお客様を獲得するのに必要な知識、商品の提案の仕方、どうすれば納得してもらえるのかがある程度まで分かったのだと思っています。