巨額赤字で苦境に陥った「日産自動車」は経営再建なるか【やさしいニュースワード解説】

在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「日産自動車の経営再建問題」です。
日産自動車が6,709億円の巨額赤字
4月下旬から5月中旬の時期は、企業の2025年3月期決算の発表が集中する時期にあたります。既に発表を終えた企業の中で、今年は大手自動車会社の動向に注目が集まりました。特に大きくメディアに取り上げられたのは日産自動車の決算発表でした。
日産の2024年度一年間の決算は、売上高が前年比0.4%減の12兆6,332億円となり、本業のもうけを示す営業利益は同87.7%減の698億円、最終利益は6,709億円の巨額赤字となりました。
中国での販売不振が響いたほか、生産設備が過剰になり、減損費用がかさんだことが大きな理由です。
経営再建のために人員削減と工場閉鎖
経営を立て直すために、日産は2026年度までに固定費と変動費を合わせて5,000億円のコスト削減を図るとしています。国内外で2027年度までに2万人の人員削減を行う方針を打ち出したほか、現在世界全体で17ある車両の生産工場を10に減らす考えも示しました。日本国内の工場も対象になるとみられています。
日産のイヴァン・エスピノーサ社長兼CEO(最高経営責任者)は「日産は緊急性とスピード感をもって自己改革を進めないといけない。販売台数に依存せず、生産性の向上を図る必要がある」と記者会見でコメントしました。
カルロス・ゴーン氏による改革の功罪
苦境にある日産の経営ですが、1999年度にも6,844億円の巨額赤字を記録しています。その後カルロス・ゴーン氏が改革を進めた結果、業績は急回復しました。
しかしゴーン氏が推進した世界各地での拡大路線が裏目に出たほか、巨額報酬の過少申告容疑などで2018年に東京地検に逮捕されて以降、日産の経営は混乱し、業績は悪化傾向が続いてきました。
米国市場で値引き販売に頼っていたことや、消費者に受け入れられる魅力的な商品開発ができなかったことも経営悪化の原因とみられています。経営再建に向けてホンダとの経営統合計画も一時検討されましたが、両社の思惑が一致せず、結局実現には至りませんでした。
トランプ政権の関税政策の影響も
今後は日産が打ち出した経営再建策を実行し、収益改善に結びつけられるかどうかが問われますが、米国のトランプ政権の関税政策で、2025年度は最大で4,500億円の影響が出るとみています。エスピノーサ社長の発言どおりにスピード感をもって経営再建を推進できるか、市場関係者を含む多くの人が注目しています。
一方、トヨタ自動車は、売上高にあたる営業収益が前年比6.5%増の48兆367億円と過去最高となりましたが、営業利益は同10.4%減の4兆7,955億円、当期利益は同3.6%減の4兆7,650億円でした。
ホンダは営業収益が前年比6.2%増の21兆6,887億円、営業利益が同12.2%減の1兆2,134億円、当期利益は同24.5%減の8,358億円でした。